特集「技術の多様性が拓く新境地」発刊によせて
理事 技術開発本部副本部長 技術基盤センター所長 松澤 克明
現在,技術が生み出すイノベーションの現場では,単一分野の深化だけでなく,異なる領域の技術を組み合わせることで新たな価値が創出されています.本号のテーマである『技術の多様性が拓く新境地』が示すように,多様な技術の融合こそが未知の課題を解決し,新たな地平を切り拓く鍵となると考えています.
例えば,回転機械技術と材料・構造技術,ロボティクス技術と制御・通信・センシング技術,化学反応や微生物反応技術と流動層技術などで新たな可能性が生まれます.これらに加え,DX,例えばAI,MI ( Materials Informatics ),MBD ( Model Based Development )などとの融合により,開発期間の短縮や材料性能・システム性能の飛躍的な向上が期待できます.こうした異分野の組み合わせによる革新は,従来の枠組みでは想像し得なかったソリューションを生み出し,社会に大きな付加価値を提供します.
さらに,多様な技術者が互いの知見を持ち寄り協働することも,イノベーション推進の重要な要素です.異なる専門性やバックグラウンドを持つ人々がチームを組むことで,それぞれの発想が刺激され,創造性が飛躍的に高まります.IHIグループ内の研究者・技術者のみならず,スタートアップ企業や大学など社外のパートナーとの連携も革新の加速に寄与します.組織や業種の壁を越え多様な人材が交わることで,従来にない発想とスピード感をもって技術開発に取り組むことが可能となるのです.
常識にとらわれないソリューションを創出する,または新技術の社会実装を加速するためには,このような異なる技術と人材が響き合うエコシステムを早期から構築することが肝要です.社内はもとより,関連する多くのステークホルダー(産官学や異業種)とのオープンな議論を通じて,複合技術を支える基盤技術の整備やDX推進を図りつつ,新たな製品や技術の社会受容性を高めていく必要があります.また,その過程では世界的な標準化や法制度の整備への対応も視野に入れ,協働して取り組むことが求められます.これらの多様な人材で構成されるエコシステムが有機的に機能すれば,技術開発から社会実装まで道のりが自然と形成されます.
前号の(第65巻第1号)『新たな価値を創る技術開発への挑戦』でも強調されたように,激変する時代において常に技術開発へ挑戦し続けることが重要です.その挑戦をさらに次の次元へと導くのが「多様性」の力だと確信しています.多様な技術と人材の融合によって生まれるシナジーを武器に,IHIグループはこれからも世界の最先端を目指してまいります.