新技術採用で高効率を実現した新型ターボコンプレッサー
-工場の運用コスト低減や省エネ目標達成に貢献-
株式会社IHI回転機械エンジニアリング
株式会社IHI回転機械エンジニアリングが新製品「TRZ 型ターボコンプレッサー」を開発した.インペラや軸受などに新技術を採用し,従来機種に比べて大風量および性能向上を実現した.開発内容と製品の特長について紹介する.
はじめに
工場の生産現場において,コンプレッサーは圧縮空気を供給するという重要な役割を担っている.圧縮空気は,エアシリンダなどの動力源,塗装工程,洗浄後の水切りや乾燥,機械加工後の切粉飛ばしなど,多様な用途で広く利用されている.その利便性や即応性の高さから,圧縮空気は幅広い産業分野で必要不可欠な存在となっている.
一方,圧縮空気の生成には多くの電力が必要であり,コンプレッサーの消費電力量は,一般的に工場全体の20 ~ 40%を占める.このため,コンプレッサーの省エネルギー化は生産コストの削減や環境負荷低減に直結する重要な課題となっている.
こうした背景を受け,高効率かつワイドレンジ化を実現した新型汎用ターボコンプレッサー「TRZ 型ターボコンプレッサー」を2025 年5 月26 日にリリースした.本稿では,TRZ 型ターボコンプレッサーおよびその開発内容について紹介する.
TRZ 型ターボコンプレッサー
TRZ 型は,従来機種(TRE 型)と同等の設置スペース・外形寸法を維持しながら,吐出し空気量を15%増加させることに成功した.これによって,同じ吐出し空気量に対する設置スペースの削減や,従来は複数台必要だった小型コンプレッサーをTRZ 型1 台に集約できることから,設備コストの削減,設置スペースの有効活用が可能となった.さらに,同じ必要空気量に対してダウンサイジングしたことにより,コンプレッサー自体の資源使用量の削減や製造および廃棄に関わるライフサイクル全体での環境負荷低減にも貢献している.
また,原単位(消費電力量当たりの吐出し空気量)も従来機種と比較して向上した.これにより,工場の運用コスト低減と省エネ目標達成への貢献が期待できる.
技術的特長
ターボコンプレッサーは,インペラと呼ばれる羽根車を高速回転させ,空気を連続的に吸い込み,遠心力と慣性力を利用して空気に運動エネルギーを与え,圧力を高める機械である.TRZ 型では,新型インペラの開発によって大風量化と高効率化を実現した.具体的には,数値流体力学 ( Computational Fluid Dynamics:CFD ) を活用したインペラの設計を行い,さらにインペラの吸入形状の見直しにより部品点数を増やすことなく効率向上を実現した.これにより,レンジマップ(コンプレッサーの運転可能領域を可視化したもの)における幅広い範囲で,既存機種を上回る性能を達成した.
ターボコンプレッサーのインペラを支持するピニオン軸受は,軸が高速回転するため,機械損失低減と振動安定性の両立が求められる.TRZ 型では,従来の油浴式から直接潤滑式に変更したティルティングパッド型すべり軸受を採用した.油浴式は軸受内部を潤滑油で満たし,ピニオン軸の回転でしゅう動面に給油する方式であるが,潤滑油の攪拌損失や軸受温度上昇が課題だった.直接潤滑式は,給油ノズルでしゅう動面に潤滑油を直接噴射し,軸受内部での潤滑油循環による攪拌損失と温度上昇を抑えることができる.TRZ 型はさらにその設計を進化させ,耐荷重性能と冷却性能向上により,機械損失の低減と機器のダウンサイジングを両立した.
おわりに
本稿で紹介したTRZ 型ターボコンプレッサーは,工場の運用コスト低減や省エネ目標達成に貢献する製品である.また,開発過程で得られた技術やノウハウは,他のターボコンプレッサーへの水平展開による機能向上も期待できる.今後も高効率かつ信頼性の高い製品づくりを通じて,お客さまの発展と持続可能な社会の実現に貢献していく.