特集「エンジニアリングの新展開」発刊によせて
株式会社IHI 技術開発本部副本部長 弥富政享
IHIは創業時の造船からはじまり,機械設備,プラント,航空機エンジン,ロケットなど多くの新しい製品を世の中に送り出しており,創業からものづくり技術を駆使して先進のエンジニアリングを創出することに取り組んできました.現在,地政学リスクに加え,エネルギーの供給構造の変化や脱炭素化に向けた動きなど我々を取り巻く環境は急速に変化しています.このような状況下でも「世界中の人々の安心・安全,豊かな暮らしを根幹から支える」ためには,これまで培ってきたエンジニアリングの力を発揮していくことが非常に重要であると感じています.
エンジニアリングとは数学や物理などの科学的知見を工学として形にし実用化することであり,まさに企業の技術開発そのものです.世界的には,AIをはじめとしたデジタル技術の進歩も目覚ましく,また,環境負荷低減に向けた新たな材料や燃料転換技術など常に最先端の技術が次々と出てきています.これらを社会実装するまでの期間も年々短くなってきており,常に世界の最先端で居続けるためには,開発のスピードを上げ,世界に先駆けて実用化していくことが求められています.そのためにも,本号のテーマである「エンジニアリングの新展開」を進めていくことが必要です.これにより,新たな価値を継続的かつ迅速に創出していきたいと考えています.
例えば,デジタル・シミュレーション技術とこれまで培ってきた熱力学,流体力学,機械力学,材料力学などをベースとした基盤技術を組み合わせた技術の紹介を行っています.このように基盤技術と新技術をどのように組み合わせて価値を創出するかが社会に問われています.
新たな価値を生み出しエンジニアリングを新展開していくためには,自社の技術だけでは足りない部分も多々あります.関連する技術者だけでなく,一見関連しそうにもない技術者との融合も必要であり,また,関連する政府機関やステークホルダーとの議論を通じて新たな技術の展開をともに考えていくことが重要になってくると考えております.本号を通じて多くの皆さまと議論を重ねることができれば幸いです.