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芝生のプロフェッショナル

芝生と微生物

みなさん、土の中には微生物が数億匹もいることをご存知ですか?

正確に言うと、良い土1gの中に数億~数10億個の微生物細胞が存在します。

微生物は土の中で、枯死した植物や昆虫などを分解し、やがて土へと還す重要な働きをしています。土の中で暮らす微生物を大きく細菌類(いわゆるバクテリア)、菌類(カビ、酵母、キノコの仲間)、放線菌などに分類することができます。バクテリアひとつをとっても今までに約1400属、6800種が知られています。しかし、核酸の分析に基づいた種数の類推から、実際にはその約10倍~100倍の約40000~400000種は存在するであろうといわれています。

学校の芝生にももちろんこれらの微生物が多数生息していますが、微生物の種類はその土地によりほぼ全部異なっているといっても良いでしょう。芝草の種類、使用している肥料の種類、気温、周囲の植生、土壌の種類、その他様々な環境の変化により微生物はその土地ごとに対応した菌相(微生物の種類と数)を示します。

したがって、よく「○○菌」などと称してこれを蒔くと芝生の生育が旺盛になるなどの商品が見られますが、これらはほぼ例外なく、科学的な論拠がないものであり、微生物の取り扱い方法にしても、微生物・生化学の常識を逸脱している場合が多く、微生物・生化学に詳しくない人たちを対象としたある種の商売の方法であることが多いです。

以前、東京大学農学部のM教授が「これら○○菌の類は、確かに条件があった場合にのみ、レアケースとしてうまくいくことがあるかもしれない。しかし夢の部分を強調し、万能であるかのような言い方をするあまり、これが世間ににせものだとわかった時に、我々が長い時間を掛けて追いかけてきた夢までもにせものとして扱われ、夢を壊されかねない。非常に迷惑である。」とおっしゃってました。

現在は、土壌中の微生物の種類、量までも同定できるPCR-DEEG法があるため、○○菌の効果についても科学的に証明可能です。PCR-DEEG法による通常の菌相遷移について下表に示します(機会があれば、○○菌を購入してデータを示したいと思います)。

もちろん市販の微生物資材やこれを散布する方法を全否定するつもりはありません。環境条件その他がうまく適合すればレアケースながらうまくいくことも無いとは言えないからです。また微生物資材の成分として、植物の生長には欠かせないアミノ態窒素が多く含まれることがあります。過去の分析の結果、微生物そのものではなく、この窒素源が植物の生長に役立っているケースも時々見受けられました。

しかしながら、芝生管理を市販の微生物資材などに頼ろうとするのではなく、計画通りに芝刈りを行い、水をまき、肥料散布を行うなど適切な芝生を管理を行えば、自ずとその気候風土に合った、良好な微生物相が得られることでしょう。

図:芝生中に微生物製剤を散布した後の菌相遷移シミュレーション
芝生中に微生物製剤を散布した後の菌相遷移シミュレーション


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