前話では、次世代航空機の開発について、将来の社長が航空・宇宙・防衛事業領域 企画管理部 事業企画・広報グループの飯塚主査にお話を伺いました。今回はその続きです。
将来の社長
飯塚くん、昭和のヒット曲を聴きながら、ノドを潤し、おやつも食べたし、今後の我が社の技術開発について、続きを教えてくれたまえ!
飯塚さん
先程は、ごちそうさまでした!次世代航空機で、SAF(Sustainable Aviation Fuel)、水素、アンモニアなど、 新しい燃料を使えるエンジンの開発について説明します。
将来の社長
ニュースでも観たけど、我が社がつくったSAFを燃料にした旅客機での試験フライトは成功したんだよね?
飯塚さん
はい。あの時は、通常の燃料とSAFの混合燃料でした。
将来の社長
そうなの!? まだ、SAF100%じゃないんだ...
飯塚さん
今は、10%くらいの混合です。世界ではSAF100%の試験フライトを実施した例も出てきています。しかし、世界中でSAFの原料となる廃棄油の争奪戦になっており、価格も急騰して、入手が非常に困難になっています。
将来の社長
それでかぁ!この前、居酒屋などで使用済み油が盗まれる事件が起きてるってニュースで見たよ。
飯塚さん
将来の社長は、ニュース番組がお好きなんですか?
将来の社長
社会で起きることは、「時代の声」の表れなんだよ。時代の声に応えて、新しい技術・製品を開発して社会の発展に貢献するのがIHIのミッションだから、つぶさに新聞やニュース番組を見るのは社長としての日課だよ!
飯塚さん
ご立派です! 私も日課にします。
将来の社長
うちは、SAFへの対応だけじゃなく、水素やアンモニアを燃料にすることも想定してるんだよね?
飯塚さん
そうです。液体水素は、-253℃以下でないといけませんから、どうやってその温度を保ちながら飛ぶかという課題があります。
将来の社長
そんな低温に冷やすには、かなりの電力が必要になるから、トータルで見ると環境には優しいのかな?
飯塚さん
冷やそうとすると、多くの電力が必要になり、その電力をつくる設備、または、大きな蓄電池などのスペースも必要です。だから、冷やしません。断熱で温度を維持する方法を検討しています。
将来の社長
飲み物の温度を保つ真空断熱の水筒と同じようなこと?
飯塚さん
そうですね。真空二重壁などで、なるべく温度を伝えないようにする方法を検討しています。
将来の社長
真空で二重となると、今よりもタンク壁は分厚くなるよね?ってことは...
飯塚さん
その分、重くもなります。また、現在の燃料と同じエネルギーを出すためには、水素は約4倍の体積が必要になり、その分、燃料タンクも大きくなります。
将来の社長
壁が分厚くなって、タンク自体が4倍も大きくなるんじゃ、重量的にきついんじゃない?
飯塚さん
そうなんです。それに、これまで燃料タンクは両翼の中にありましたが、水素なので耐圧性を高めるために、タンクの形が円柱形になり、積載量も増えますから、翼の中には収納できず、機体の方に付くかもしれません。
将来の社長
じゃあ、座席数が大きく減っちゃうから、航空ビジネスとしては痛いね。長く飛ぶにはタンクを大きくしたいけど、重くなるからむやみにタンクも大きくできないし、なかなか難しい問題だね...。
飯塚さん
さすがは将来の社長、鋭い! 航続距離、採算性も考えて、小型から中型クラスへの導入が現実的と考えられていますが、まだまだ課題は山積みです。
将来の社長
では、これも国際協力体制でつくっていくことになるんだね?
飯塚さん
そうなりますね。この諸問題を解決するには、技術上のブレークスルーが必要です。
将来の社長
そのブレークスルーは、ぜひ、うちがやろうよ!
飯塚さん
そのつもりです!
将来の社長
うん、頼もしい!ところで、うちが得意とするアンモニアについては、どうなの?
飯塚さん
アンモニアの場合は、パワーは水素よりも劣りますが、水素に比べるとタンクの耐性が要らないので、翼の中に入れられると思います。
将来の社長
よし、アンモニアでいこう!
飯塚さん
しかし、燃料として使うには、現在の生産量ではまったく足りません。世界的に見ても大きく不足しています。
将来の社長
だったら、つくればいいじゃん!ってカンタンに言いがちだけど、そこにも課題があるんだね?
飯塚さん
そうなんです。化石燃料から取り出すブルーアンモニアではCO₂を大量に排出するので、再生可能エネルギー発電設備でつくるグリーンアンモニアでないと意味がありません。そして、必要な分をつくるには製造設備、運搬手段などが不足しています。それは到底、我が社だけで解決できる規模ではありません。
将来の社長
そうか...昨年、創業170周年記念の新聞広告などで、「今後、IHIはバリューチェーンをつくる」って宣言してたのは、そういうこともあってのこと?
飯塚さん
そうです。よく見てらっしゃいますね!
将来の社長
将来の社長として、今の経営陣がどういう舵取りをするのか知っておかないとね。今やってることが、将来をつくるからね。
飯塚さん
国内はもとより、世界中の企業、叡智と手を組んで、地球の課題を技術で解決していきます。そのために、我々はいろんな挑戦を続けます!
将来の社長
次世代航空機を実現させるためには、難しい諸問題があることは、良くわかったよ。しかし、キミたちの熱い意気込みと、日々、技術を前進させているのがわかったことが、何よりうれしいよ!ボクが社長になるまでに実現してね!
飯塚さん
そのつもりです!将来の社長が、本当の社長になった時には、我々の技術でつくった次世代航空機に乗っていると思います!
将来の社長
その日を楽しみにしてるよ!