IHIは、日本上空を飛ぶ航空機に搭載の航空エンジンの内、国内生産の6~7割のシェアを誇るリーディングカンパニーです。今回は、航空エンジン技術の基本について、将来の社長が航空・宇宙・防衛事業領域 企画管理部 事業企画・広報グループの飯塚主査にお話を伺います。
飯塚さん
将来の社長、こんにちは!
将来の社長
飯塚くん、ボクは飛行機やメカが好きだから、この立場を利用して、航空エンジンの技術開発について詳しく知りたいと思っていたんだよ!
飯塚さん
航空エンジンは、我が社が80年以上技術開発を続けてきた分野ですので、興味を持っていただき、光栄です!詳しい説明の前に、社長は飛行機が空を飛んでいる時に、どんな力が働いているかをご存じでしょうか?
将来の社長
知ってるよ!航空エンジンがつくる飛行機を前へ進める「推力」、それを受けて空気抵抗などで生じる「抗力」、地球が飛行機を下方向へ引っ張る「重力」、翼の周りの空気の流れがつくる機体を持ち上げる「揚力」の4つの力があるんだよね?
飯塚さん
さすが将来の社長、お詳しい!
将来の社長
ボク、幼稚園の頃にパイロットになるって決めたんだ!
飯塚さん
えっ!? 将来は、パイロットになるんですか!?
将来の社長
心配しないでくれたまえ。今はIHIに入社するって決めてるから。
飯塚さん
それは安心いたしました(笑)
将来の社長
航空エンジンは、どういう仕組みで「推力」が生んでいるのか詳しく教えて!
飯塚さん
はい。まず、エンジンの入口にあるファンが空気を取り込みます。取り込まれた空気は低圧コンプレッサで圧縮されて、次に高圧コンプレッサで圧縮されて温度と圧力が上昇して、高温・高圧になります。その空気が燃焼器で燃料と一緒に燃やされると、燃焼ガスができて、タービンを回します。タービンの回転で得られた駆動力が、エンジン全体を貫くシャフトを通じて前方のコンプレッサやファンに伝えられ、高速回転するファンが大量の空気を後方に押し出すことで、飛行機を前進させる「推力」を生み出します。
将来の社長
へぇ〜。外からだとエンジンはファンとファンケースだけに見えるけど、中は、こんな構造になってるんだね。
飯塚さん
IHIは、1940年代からジェットエンジンの試作と開発をはじめ、 現在では、いろんな企業が役割分担する国際共同開発が主流の中、 ジェットエンジンの駆動力となる低圧タービン、空気を取り込むためのファンブレード、ファン全体を保護するファンケース、 そして各パートをつなぐ軸となるシャフトなどをつくっています。
将来の社長
大事なところをつくってるんだね!シャフトなんかは、長くて真っ直ぐにつくるのが難しいから海外メーカーはつくりたがらないんだってね?
飯塚さん
そんなこと、良く知ってますね!
将来の社長
一応、社長だから海外にもツテがあってね。
飯塚さん
シャフトは呉で作っているんですよ。
将来の社長
そうなの!? あの戦艦大和を作った工場だよね!?造船の技術がここでも生きてると知って、胸がジーンとなったよ。
飯塚さん
時代の声に応えて、技術を磨いていく。それが、技術と叡智のIHIです!
将来の社長
再び、ジ〜ン!ところでさ、エンジンってすごく過酷な環境で使われてるけど、寿命はどれくらいなの?
飯塚さん
平均で20年くらいです。ですから、ある新型機のエンジンが完成したら、次の世代の機体に向けて、さらに高性能で高燃費のエンジンを提供できるように日々、試行錯誤を重ねて研究開発をしています。
将来の社長
最近はどんなところが進化したのか教えて。
飯塚さん
代表的なものでは、2016年に世界で初めて、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)製の構造翼ガイドベーン(SGV)を作りました。SGVはエンジンをぐるりと覆うファンケースの重量を支える役割と、エンジン内部の空気の流れをスムーズにする役割の両方を兼ね備えた部品で、エンジン1つに50枚ほど取り付けられています。金属製よりも大幅に軽量化することができ、燃費の向上に貢献できました。
将来の社長
炭素繊維強化プラスチックは、他のところにも使えばいいんじゃない?
飯塚さん
さすが将来の社長、鋭いご指摘です!じつは、現在のエンジンはジェットエンジンと言いながら推力の大部分をファンで出しているんです。そうなると推力を大きくするためにファンを大きくしたい。ファンを大きくすると、当然ファンケースも大きくなって、重たくなります。重いと燃費が悪くなるので、軽くするために炭素繊維強化プラスチックに変えたい。しかし、変えるためには万が一ファンブレードが吹っ飛んだ時に、ファンケースを突き破らないという絶対条件が出てくる。突き破ると胴体に突き刺さりますので。だから、その絶対条件はクリアできることを証明しなければいけません。
将来の社長
どうやって証明するの?
飯塚さん
小さなサイズから実験を重ねて、カーボンファイバーの繊維の組み合わせを変えたりして強度を高めて、最後は、実際の航空エンジンを使い、飛行時の回転数に上げた状態のファンブレードを火薬で爆破して飛ばして、ファンケースに突き刺す試験をします。
将来の社長
そこまでやって、初めて実用化できるんだね...
飯塚さん
新材料を伴う技術開発は、通常材料メーカーと製造メーカーそれぞれで行いますが、IHIは材料と製造の両方の技術を持っているので、セットで独自開発できる強みがあります。
将来の社長
もっと遠くへ、もっと速く、もっと多くの人を乗せてと、飛行機の歴史が進んでいったように、君たちの技術も一緒に進んでいる!80年以上、先輩たちから受け継いで来た技術と情熱が、今も燃え盛っていることが素晴らしいよ!
飯塚さん
ありがとうございます、将来の社長!航空エンジンの技術は、人の命を預かる技術でもあります。だから、実用化されるまでに長い道のりが必要です。
将来の社長
どのくらい掛かるの?
飯塚さん
それについては、第2話でお伝えします!
将来の社長
それがいいね。いろんなことを一気に詰め込んだから、脳が痺れたよ。アイス食べながら、ちょっと休憩しようよ。
(第2話へつづく。)