前話では、航空エンジンの基本的な仕組みやIHIの技術開発について、将来の社長が航空・宇宙・防衛事業領域 企画管理部 事業企画・広報グループの飯塚主査にお話を伺いました。今回は航空エンジン開発の難しさや国際協力体制について伺います。
将来の社長
前回は、航空エンジン技術の基本と、IHIの技術開発の強みについて説明してもらったよ。
https://www.ihi.co.jp/ihiing/hot_topic/20240719-01.html
ところで、今はエンジンの一部を担当しているけれど、キミたちの技術力なら、全てを自分たちでつくれるんじゃない?
飯塚さん
技術的にはできなくはありません。しかし...現在の航空エンジン開発の規模は非常に大きく、費用も時間も掛かります。1社でやるにはリスクが大き過ぎるため、世界の仲間と分担・協力しながら開発を進めるのが現実的です。
将来の社長
海外の仲間と協力してやっていく重要さは、以前、技術基盤センター所長にも聞いたよ。航空エンジン開発も例外じゃないんだね。
(IHIは、失敗を喜ぶ挑戦心の塊となり、世界の仲間と次の世界へ!
https://www.ihi.co.jp/ihiing/hot_topic/20231211-01.html )
飯塚さん
さすがの記憶力です、将来の社長!航空エンジンの開発の難しさのひとつに、初期負担の大きさがあります。新しいエンジンの企画を始めてから、実際に量産体制に入ってお金を稼げるようになるまでに、約10年かかります。
将来の社長
10年も!?ボク、この前10才になったところだよ......
飯塚さん
その間、社員に給与を払い続けるのは当然のこと、同時に大規模な設備をつくらねばなりません。世界中の空で安全・安心な飛行を保証するために、部品から製造工程まで、高品質を保つための検査も求められます。国際機に搭載するエンジンができたら、日本の航空局だけでなく、アメリカ連邦航空局(FAA)や欧州航空安全機関(EASA)から検査員が来て2~3日をかけて、部品の製造工程、品質システムなど、いろんなことが細かくチェックされます。
将来の社長
その間、お金は1円も入ってこないんだよね?
飯塚さん
そうです。
将来の社長
1社でやろうなんて、とても無理だね...
飯塚さん
何十年も前は、自社開発が主流でしたが、開発がうまく行かずに経営破綻した会社が出て以来、国際共同開発が主流になりました。
将来の社長
国際協力体制での開発の意義、重要性がわかったよ。世界の仲間と組む時、我が社の強みは何なの?
飯塚さん
我が社の強みは造船の頃から受け継いで来たモノづくり力と、新素材と製造法を同時に開発できることですね。例えば、低圧タービンと低圧コンプレッサまでをつなぐロングシャフトという長い棒状の部品がありますが、高温と大きな力がかかり、それらに耐えられる細くて長い軸を真っすぐにつくるには高いモノづくり力が必要で、海外メーカーはなかなか真似できません。
将来の社長
この前、学校の工作時間に粘土で長い棒をつくったけれど、なかなか真っ直ぐにはつくれないものだね。それに、重さですぐに折れてしまったよ。
飯塚さん
そうなんです。精密な機械を使っても、長い軸を真っ直ぐにつくるのは案外難しく、ロングシャフトでIHIは世界トップシェアを誇っています。
将来の社長
今、さり気なく自慢を入れたね!
飯塚さん
バレましたか...(笑)世界企業と取り組む航空エンジン製造は、常に進化を求められます。このロングシャフトの塗装工程もいち早く新技術を採用して自動化を進め、熟練工に頼らずに、早く安定してつくれるようにしました。
将来の社長
停滞は後退と同じ。トップシェアに甘んじるのではなく、ちゃんと技術を進化させているんだね。将来の社長として大変頼もしいよ!他にも、今後、進化させていくものを教えて。
飯塚さん
たくさんありますので、それらについては、次回、お伝えします!
将来の社長
えーっ。じゃあ、次回はジェットの速さで、教えてくれたまえ!
(第3話へつづく。)