Change
Location

現在は日本サイトをご利用中です

特集「バリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現」発刊に寄せて

常務執行役員 事業開発統括本部 本部長  小林 淳

PDFダウンロード

2021 年のCOP26で,多くの国が2050 年までのカーボンニュートラル達成を宣言し,その後,各国・地域で対応案が次々と表明され,グリーントランスフォーメーション ( GX ) という言葉をメディアで目にしない日はないほどに,カーボンニュートラル達成に対する世界中の関心が高まっています.しかしながら,その達成のための具体策は各国の政策やエネルギー事情によって異なり,国や地域によって多種多様な取り組みが行われている状態であるため,カーボンニュートラル達成に向けた国際的なコンセンサス構築と,脱炭素を推進するためのインセンティブの設定が急務となっています.

2023 年4 月中旬に札幌で開催されたG7札幌 気候・エネルギー・環境大臣会合の共同声明文では,産業の脱炭素手段として,水素に並列して「アンモニア」という単語が初めて明記されました.アンモニアはIHIが長年,化石燃料の代替エネルギーとして研究開発を進めているものであり,社会実装可能な段階に到達しています.

ただし,そのアンモニアも,化石燃料由来のものではサステイナブルなエネルギー源になり得ないことから,IHIグループは太陽光や風力などの再生可能エネルギー由来のグリーンアンモニア製造から,その貯蔵,輸送,利活用までの一貫した「グリーンアンモニアバリューチェーン」を構築することで,完全にクリーンかつサステイナブルなエネルギー社会の創出を目指しています.また,グリーンアンモニア製造技術開発から派生した新たな技術として,化石燃料を必要としない合成メタンやSAF(持続可能な航空燃料,Sustainable Aviation Fuel)などといったグリーン炭化水素の製造開発も進んでいます.これらにより,カーボンニュートラルを加速させることができると考えています.

2023 年4 月に新設された事業開発統括本部の重要ミッションの一つが,クリーンエネルギー分野におけるバリューチェーンの早期構築です.アンモニアバリューチェーンの構築・拡大においては,アンモニア価格の低減,アンモニア流通網の早期確立,利活用技術の選択肢を増やすことが重要であり,IHIグループ全体で取り組んでいます.また前述のとおり,カーボンニュートラル達成の具体策が多様化しているなかで,アンモニアの燃料利用に対するパートナーの獲得が重要であり,IHIグループとして技術的根拠に裏付けられた情報発信や丁寧な説明を行っていく責務があると認識しています.

本号においてご紹介するカーボンニュートラルに関する技術論文や記事をお読みいただき,バリューチェーンの早期構築・拡大に向けた取り組みについてご理解いただけましたら幸いです.IHIグループはこれらの技術開発をとおして,カーボンニュートラルに向けた取り組みをこれからも積極的に行ってまいります.