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カーボンニュートラルな未来をつくる
— バリューチェーンの構築に挑む —

株式会社IHI   

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地球温暖化による気候変動は,グローバルに取り組まなければならない大きな社会課題です.この気候変動への対策として,世界各国で温室効果ガスの削減目標を設定して,カーボンニュートラル,脱炭素社会の実現を目指しています.しかし,カーボンニュートラルを実現するためには,温室効果ガスの排出量が少ない発電設備や製造設備に改修すればよいというわけではありません.製造に関わるプロセスだけでなく,貯蔵,輸送,利活用に至るバリューチェーン全体にわたって,カーボンニュートラルを実現する仕組みを整えていく必要があります.

IHIグループでは,これまで以上に自然や社会に配慮し,地球環境をよりよい状態に再生するソリューションを提供し続けていきます.これが長年技術で社会貢献をしてきたIHIグループの責務であると考えています.ここでは,バリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現するために,さまざまなステークホルダーとともに進めている,IHIグループの技術開発の取り組みと考え方についてご紹介します.

CO₂を排出しないアンモニアの製造・貯蔵技術を確立する

アンモニアの製造においては,従来の発電設備で課題だった再生可能エネルギーの変動に対処するとともに,低コストで効率的なグリーンアンモニア製造の技術開発を進めています.製造したアンモニアの貯蔵では,これまでLNGタンクなど多くの貯蔵設備を製造してきた技術を活用して,カーボンニュートラルな燃料となるアンモニアの貯蔵設備の開発に取り組んでいます.アンモニアの貯蔵については既存技術として確立しているといわれていますが,タンクの内槽材のアンモニアSCC(応力腐食割れ)など特有の技術課題を解決しなければなりません.この技術課題を解消すべく,新たなアンモニアSCCの試験法とその試験装置を開発しています.これまでアンモニアタンクの大型化に向けた設計検討を行い,技術的成立性を確認してきました.並行して,アンモニアタンクの最有力候補と考えられるPC(プレストレストコンクリート)メンブレンと呼ばれるタンク型式についても,国内における許認可に向けた対応を進めており,将来的にアンモニアを大量に貯蔵できるタンクの早期実現を目指して取り組んでいます.また,貯蔵したアンモニアの流通網についても早期確立すべく進めていきます.

アンモニアの利活用により,さらなるCO₂の排出削減に貢献する

貯蔵したアンモニアを燃料として活用することで,カーボンニュートラルな燃料の利活用プロセスの開発に取り組み,発電設備から排出される二酸化炭素 ( CO₂ ) を削減したいと考えています.そのために,アンモニア専焼でCO₂フリー発電を達成したガスタービンでは,大型ガスタービンの適用に向けて技術開発に取り組んでいきます.また舶用向けガスエンジンや火力発電設備においてもアンモニアを燃料とした技術開発に取り組み,専焼化を目指していきます.

CO₂を活用したクリーンな有用資源の製造技術を開発する

各工場などから排出されるCO₂や大気中のCO₂を回収する技術を開発しています.この回収したCO₂を水素 ( H₂ ) と反応させることで,合成メタン ( e-methane ) を製造するメタネーション技術を開発しています.メタン ( CH₄ ) は,天然ガスの主成分であり,既存の都市ガスインフラを活用できることから,メタネーション技術は,カーボンニュートラルに向けたキーテクノロジーの一つとして期待されています.すでに小型メタネーション装置の販売を開始し,試験高炉設備から排出されるCO₂を再利用するためのメタネーション装置を受注しています.今後,さらに大量の処理が求められると予想されることから,メタネーション装置の大型化を進めています.加えて,CO₂とH₂から生産される,樹脂・プラスチックの原料である低級オレフィン類,持続可能な航空燃料 ( Sustainable Aviation Fuel:SAF ) についても,研究機関と協力して技術開発を加速させています.

期待されるエネルギー脱炭素化への新たな取り組み

IHIグループでは,このほかにもバイオマスやバッテリーエネルギー貯蔵システムの活用,オフグリッドコミュニティにおけるマイクログリッドの脱炭素化などに取り組んでいます.

グローバルに社会課題を捉えながらも,地域特性を考慮したソリューションを提供することで,カーボンニュートラルな社会を実現していきたいと考えています.

グローバルな知を融合し,デジタル技術により開発を加速させる

カーボンニュートラルに向けて,これまでに蓄積してきた技術に,新たな技術を開発し,これらを融合させることで実現していきます.また,CO₂排出を削減していく技術を,迅速に社会へ提供するためには,広く知を融合させることが必要となります.そのために世界各国の研究機関や企業と協力し,多くのプロジェクトで連携して進めています.また,技術開発をさらに加速するために,AIを活用した材料開発や,数値シミュレーションによるデジタルツインなど,デジタル技術を積極的に活用しています.

おわりに

IHIグループは,「自然と技術が調和する社会を創る」ことを目指し,社会課題に対する新たな価値を提案していきます.そして,これからも,さまざまなステークホルダーと協力して,新たな技術を次々と生み出し世界に送り出すために,技術開発力とエンジニアリング力の強みを活かし,カーボンニュートラルの実現に挑戦していきます.