Change
Location

現在は日本サイトをご利用中です

特集「持続可能な未来を支えるエネルギーとスマート技術」発刊によせて

執行役員 営業統括本部長  田畑 正太朗

PDFダウンロード

来年,2025 年4 月13 日から大阪・関西万博が開催されます.「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに,「People’s Living Lab(未来社会の実験場)」としてカーボンニュートラル,デジタル技術,次世代モビリティなどの最先端の技術や社会システムが,バーチャル技術も駆使してさまざまな形で披露される予定です.IHIグループでは,「フューチャーライフ万博・未来の都市」の協賛企業として,環境やエネルギーを軸に未来を描いていきます.

かつて思い描いていた未来とはどんなものだったのか,と考えながら1970 年の大阪万博を振り返ってみましょう.「人類の進歩と調和」をテーマにアジアで初めて開催された大阪万博は,今もシンボルとして残る太陽の塔の制作者でありプロデューサーだった岡本太郎が有名ですが,会場の総合設計は建築家の丹下健三,会場の案内表示などを榮久庵憲司らが担当するなど,多くの設計者や文化人が参加して未来の社会を大胆かつ緻密に描き出すことで,現在につながる技術や文化が生み出されました.動く歩道,リニアモーターカー,電気自動車,テレビ電話など,現在,実用に供されている技術やデザインがこの博覧会で初めてお目見えし,また,ピクトグラムと組み合わせた駅や建物の案内表示のような視覚的に分かりやすいサインシステムも大阪万博で初めて導入されました.

そして,アメリカ館ではアポロ12 号が持ち帰った月の石が展示されて,連日長蛇の列だったそうです.前年にアポロ11 号が月面着陸するなど,アメリカとソ連の間で激しい宇宙開発競争が行われていた時代であり,アメリカ館では月の石の他にもアポロ計画の宇宙船が,ソ連館ではボストーク計画の宇宙船や人工衛星が展示されるなど,人々は近い将来には宇宙が手の届く場所になるかもという期待を抱きながら入場を心待ちにしていたことは想像に難くありません.

1964 年の東京オリンピックから,いざなぎ景気へと続く好景気により年平均経済成長率が10%を超える高揚感の中で,人々の期待を満たしてくれる目新しいアイデアや技術を競っていたのではないかと想像します.その結果として183 日の期間中の来場者は,当初の目標の3,000 万人をはるかに上回る6,400 万人を超えて,この来場者記録は2010 年の上海万博まで最多だったそうです.

翻って今回の万博のテーマは,成長が一段落した後の社会の課題に目を向けて,急速に進化する技術で解決していくという強い意志を感じます.「いのちを救う」「いのちに力を与える」「いのちをつなぐ」という三つのサブテーマのもとに,人類共通の課題解決に向けて先端技術など世界の英知を集めて未来の社会を共に創っていこうと呼びかけられています.人類の共通認識となりつつある社会課題 = ゴールに早く,低コストで,安全に到達するために,世界中のパートナーが英知を結集することに本誌がお役に立てれば幸いです.