人工知能による荷物混載積み付け計画の自動作成
ロボットとの組み合わせで物流倉庫の積み付け作業を自動化
株式会社IHI
IHIグループは,物流自動化ソリューションの一つとして,複数種類の荷物の混載積み付けに対応したパレタイズシステムを完成させた.積載率・安定性・検品性すべてに配慮した積み付け計画を瞬時に作成可能なAIをロボットと組み合わせることで,熟練作業者の経験に頼っていた混載積み付け作業の完全自動化を実現した.
物流業界の人手不足解消に向けて
物流業界では労働力不足が深刻化しており,自動化や省人化が強く求められている.IHIグループはこの社会課題に応えるため,AIとロボットを組み合わせた物流自動化ソリューションを推進している.
物流プロセスにおける重労働作業の一つに,荷物の積み付け(パレタイズ)がある.本作業は,重量物の把持や中腰姿勢を要し,作業者への負担が大きい.また,近年増加傾向にある,多品種の荷物を同一パレットに積み付ける「混載」と呼ばれる方式の場合,積載率や安定性(荷崩れのしづらさ),検品性など複数の観点の考慮を要するため,人手による作業では,同等の条件の積み付けであっても計画にばらつきが生じやすい.
これらの課題に応えるため,IHIグループでは,混載に対応したパレタイズシステムを販売している.本システムでは,AIが荷物の種類や形状,重量などを踏まえ,最適な配置と積み付け順序を高速に算出し,ロボットがその計画どおりに作業を行う.本システムの導入により,積み付け作業の省人化と品質の安定化を実現できる.
「混載」のむずかしさ
混載パレタイズシステムを構成する重要な要素技術の一つに「混載積み付け計画を作成するAI」がある.本AIは,積み付けるべき荷物の情報(形状,数量,配置上の制約など)を入力として,各荷物の配置先と配置順序を計算し出力する役割を担う.
同じ種類の荷物のみをパレットに積み付ける「単載」と呼ばれる方式の場合,荷物とパレットの形状をもとに,最適な積み付け計画を事前に計算可能である.他方,混載の場合,積み付ける荷物の種類や数量は毎回異なるため,積載率や安定性,検品性などの要件を考慮した計画をその都度高速に求める必要がある.さらに,ロボットの機構,形状や制御精度も考慮したうえで,荷物との干渉・破損や荷崩れが生じないような配置先・配置順序を考えねばならない.
混載積み付け計画問題は,数学的には組合せ最適化問題として定式化できる.しかし,実用的に許容される計算時間内で最適解を求めることは困難である.
混載積み付け計画アルゴリズム
混載パレタイズシステムの実現に際し,「メタヒューリスティクス」と呼ばれる数理最適化手法に基づく混載積み付け計画アルゴリズムを独自に開発した.メタヒューリスティクスとは,最適解の計算が困難な組合せ最適化問題に対して,実用的な解を短時間で求めるための手法であり,製品やサービスに係るドメイン知識と組み合わせることで高性能なアルゴリズムを実現できる.
具体的には,荷物の配置先を一つずつ定めるのではなく,「棒積み」「ピンホイール積み」など,物流倉庫で広く採用されている積み方に基づき,複数の荷物をブロック化して配置先を定める方式を採用した.これにより,積載率・安定性・検品性を高めつつ,計算時間の短縮も同時に実現している.このほか,現場でしばしば行われている積み付けの「手直し」を参考にしつつ,計画作成後,高さの平準化も含めた配置先の微調整も自動的に行う.
配置順序については,ロボットの機構,形状や制御精度やそれらに基づく動作制約,さらには荷物との干渉可能性についても厳密に考慮して決定しており,ロボットによる積み付け作業が可能であることを数学的に保証している.性能面では,標準的な計算機で1 秒以下の高速計算を実現しており,リアルタイムでの計画作成と積み付け作業が可能である.また本アルゴリズムは,性能に影響する内部パラメーターを,入力データに合わせて自動調整する機構も備えているため,例えば季節の変化などにより倉庫で扱う荷物の傾向が変わったとしても,アルゴリズムを人手で再調整することなく使い続けることができる.
今後の展開
本技術は物流倉庫だけでなく,工場や建設現場など,効率的な物品配置が求められる分野において応用が可能である.今後は,こうした新しい分野への展開を進め,AIによる積み付け計画技術を社会の省力化や安全性向上に広く役立てていきたい.