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CO₂分離回収技術の社会実装を後押し
運びやすく据え付けやすい小型CO₂回収装置を開発

株式会社IHIプラント   

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小型CO₂回収装置の外観イメージ
小型CO₂回収装置の外観イメージ

カーボンニュートラルへの取り組み

2020 年10 月,日本政府は2050 年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする「2050 年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言した.また,2021 年4 月には,2030 年度の温室効果ガス排出削減目標として,2013 年度比で46%削減することを目指し,さらに50%の高みに向けて挑戦を続けるとの方針も示された.

温室効果ガスの大部分を占めるCO₂の排出削減において,さまざまな施策が取り組まれており,関連する技術開発が各種機関で活発に行われている.具体的なCO₂排出削減方法としては,カーボンフリー燃料への転換によるエネルギー使用量の低減や,発生したCO₂の分離回収・利用・貯留などが挙げられる.CO₂の分離回収( Capture ),利用( Utilization ),貯留( Storage )に関する技術群は,総称してCCUS ( Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage )と呼ばれる.CCUSのUtilizationの取り組みのうち,回収したCO₂を燃料などの有価物として再利用する技術は,カーボンリサイクルと呼ばれ,近年注目を集めている.IHIグループでも,カーボンリサイクルの対応として,CO₂からメタン( CH4 ),オレフィン( CnH2n ),持続可能な航空燃料( Sustainable Aviation Fuel:SAF )へ転換する技術開発に取り組んでいる.

こうしたカーボンリサイクルを含むCCUS全般を支える基盤技術の一つが,CO₂分離回収技術である.本技術はCO₂を含む排ガスからCO₂の分離回収を行うものであり,CO₂の排出削減および再利用には欠かせない.

ここでは,IHIグループが開発し,販売を開始した「小型CO₂回収装置」について紹介する.

カーボンリサイクルの取り組み
カーボンリサイクルの取り組み

CO₂分離回収技術とは

主要なCO₂排出源である燃焼排ガスの複数の成分の中からCO₂を分離回収する手法としては,化学吸収,膜分離,物理吸収,固体吸着,深冷分離など複数の方法が知られている.

このうち,化学吸収法とは,アミンなどのアルカリ性水溶液をCO₂吸収液とし,化学的な吸収・放散反応を利用してCO₂を燃焼排ガスなどから分離回収する技術である.CO₂の濃度が比較的低い条件(例:石炭焚きボイラ排ガスでは12 ~ 15%)においても採用することができ,下流設備での利用が容易な高濃度(99% -dry以上)のCO₂を分離回収することができる.このため,IHIグループでは,CO₂分離回収技術として化学吸収法を主に提案している.

化学吸収法を用いたCO₂分離回収プロセスの概要を以下に示す.

CO₂を含む排ガスを「吸収塔」に誘引し,CO₂がほとんど含まれていない吸収液と接触させることで,排ガス中のCO₂を選択的に吸収液に取り込ませる.次に,このCO₂が多く取り込まれた吸収液を「放散塔」に送り,加熱することで吸収液に取り込まれたCO₂を気体として分離し,冷却・圧縮することで,高純度なCO₂が回収できる.一方,CO₂を放散しCO₂濃度が低くなった吸収液は再びCO₂を吸収できる状態になる.

二つの塔(吸収塔と放散塔)の間で吸収液を循環させ,低温の吸収塔(吸収液がモノエタノールアミン( MEA )の場合:40 ~ 60℃)でCO₂を吸収し,高温の放散塔(吸収液がMEAの場合:100 ~ 120℃)で放散させることにより,連続したCO₂の分離回収が可能となる.

CO₂分離回収プロセスにおいては,CO₂吸収液の再生(温度を上げることでCO₂を分離し,再度CO₂を吸収できる状態にするプロセス)時に熱エネルギーが必要となる.IHIグループではカーボンリサイクル技術としてメタネーション(CO₂と水素からメタンを合成する発熱反応プロセス)にも取り組んでおり,メタネーションの反応熱をCO₂吸収液再生のための熱エネルギーに利用することで,外部からの熱供給が不要となり運転コストを大幅に低減するシステムも構築できる.

化学吸収法によるCO₂分離回収プロセス
化学吸収法によるCO₂分離回収プロセス

小型CO₂回収装置開発の経緯・コンセプト

カーボンリサイクルのニーズをヒアリングする中で,工場や事業所のカーボンニュートラル化を検討するお客さまから,本格的に導入する前にCO₂分離回収の試験を実施したいという要望を受けることが多くあった.

また,IHIグループが先行してパッケージ化および販売を開始した小型メタネーション装置(メタン製造量(定格):12.5 Nm3-CH4 /h)の市場投入に際して,メタネーション装置への原料供給装置に当たるCO₂回収装置はパッケージ販売しないのか,という問い合わせが多数寄せられた.

これらの要望を受けて,IHIグループでは小型CO₂回収装置を以下のコンセプトで開発した.

(1) コンパクト性
CO₂分離回収の試験は,既存の燃焼炉などのCO₂排出源近傍で実施することが想定される.施工時の作業も含めて設置場所が限られていることから,必要な機器を筐体(きょうたい)(エンクロージャー)にパッケージ化し,コンパクトにまとめた.
設置場所への輸送は陸上での車両輸送を想定し,一つのエンクロージャーが20 フィートコンテナ(高さ2,591 mm × 長さ6,058 mm × 幅2,438 mm)と同等の寸法となるように設計した.
また,エンクロージャー内に機器を収めることで,設置場所での据付手順の最小化を実現した.具体的には,現地では,陸上クレーンで吊り上げて基礎上に設置・固定し,その他の作業はエンクロージャー間の配管・ケーブル接続などの最低限の内容にとどめた.
(2) 設計の標準化
本装置は標準機として設計している.その結果,設計費の低減によりお客さまの装置導入コストが抑えられ,設計期間の圧縮により注文を受けてから短期間での納入が実現可能となった.
(3) 小型メタネーション装置との組み合わせ
小型メタネーション装置のメタン製造能力( 12.5 Nm3-CH4 /h )に合わせたCO₂供給能力として,回収CO₂量0.6 t-CO₂/d ( ≒ 12.5 Nm3-CO₂/h )の能力で設計した.
また,小型メタネーション装置で発生する反応熱を吸収液の再生に利用できるよう,熱媒油を介して外部から熱を取り入れることもできる構成とした.

小型CO₂回収装置の仕様と機器構成

小型CO₂回収装置の主要仕様,機器構成を以下に示す.

小型CO₂回収装置の主要仕様
小型CO₂回収装置の主要仕様
(1) CO₂吸収塔
CO₂を含む排ガスと吸収液の気液接触により,CO₂を吸収液に取り込ませる.
(2) CO₂放散塔
塔内は(吸収塔よりも)高温・高圧であり,吸収液からCO₂が気体として分離される.
(3) アミンポンプ
CO₂吸収塔とCO₂放散塔の間で吸収液を循環させる.
(4) アミン熱交換器
CO₂放散塔へ送る吸収液を加熱し,吸収液からCO₂が分離される状態にする.また,CO₂吸収塔へ送る吸収液を冷却し,吸収液がCO₂を吸収できる状態にする.
(5) 酸性ガス除去塔
排ガスをCO₂吸収塔へ導入する前に苛性ソーダ(水酸化ナトリウム,NaOH)水溶液と気液接触させ,吸収液の劣化要因になる酸性ガスを中和・除去する.
(6) 残アミン除去塔
CO₂吸収塔でCO₂を取り除いた残留ガス中に含まれる少量のアミン液成分を除去する.
(7) 汽水分離器
CO₂放散塔で回収したCO₂を冷却し,水分を凝縮・除去する.
(8) リボイラ
CO₂放散塔内の吸収液再生のため,吸収液を加熱する.熱媒として,熱媒油を用いる.
(9) 熱媒油循環・加熱設備
熱媒油をリボイラに供給する.熱媒油の加熱は外部からの熱供給または電気ヒーターにより行う.
(10) 苛性ソーダ,水,CO₂吸収液,廃液用のタンク
運転に必要な苛性ソーダ,水,CO₂吸収液を貯留する.また,排出される廃液を貯留する.
(11) 受配電盤・制御盤
小型CO₂回収装置内の機器への電気供給,および運転制御を行う(遠隔監視技術を活用した運転・保守支援システム「 MEDICUS NAVI®」を実装).
小型CO₂回収装置のプロセスフロー概略図
小型CO₂回収装置のプロセスフロー概略図

また,小型CO₂回収装置は,2 台のエンクロージャー(ユニット 1 + ユニット 2)で構成される.

(1) ユニット 1
(サイズ:高さ5,000 mm × 長さ6,300 mm × 幅2,200 mm)
CO₂吸収塔,CO₂放散塔,アミンポンプ,アミン熱交換器,酸性ガス除去塔,残アミン除去塔,熱媒油循環・加熱設備を含む.輸送時は上下に分割し,設置場所で接続する.
(2) ユニット 2
(サイズ:高さ2,400 mm × 長さ4,000 mm × 幅2,200 mm)
苛性ソーダ,水,CO₂吸収液,廃液用のタンク,受配電盤・制御盤を含む.
2 台のエンクロージャーを組み合わせて,敷地形状に合わせて配置できることも小型CO₂回収装置の特長の一つである.

今後の展望

小型CO₂回収装置の商用1 号機を2026 年6 月に国内廃棄物処理設備向けに納入予定である.本1 号機では,一般廃棄物の燃焼排ガスを原料としてCO₂を分離回収するもので,回収したCO₂はポリマー原料への有価転化(実証試験)に活用される.

IHIグループでは,小型CO₂回収装置を広く展開することにより,CO₂分離回収技術の社会実装を促進し,中型CO₂回収設備(数 t ~ 数十 t-CO₂ /d)や大型CO₂回収設備(数百 t ~ 数千 t-CO₂ /d)の需要創出・商用化を目指している.

小型CO₂回収装置の組み合わせイメージ
小型CO₂回収装置の組み合わせイメージ