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気候変動への対策

考え方

IHIグループは、「気候変動への対策」をESG経営における特に重要な課題の一つとして位置付け、対策を進めています。
気候変動は、社会や経済に与える影響が非常に大きく、企業にとっては、その持続可能性が問われる社会課題であり、IHIグループが取り組むべき課題と考えています。

外部イニシアチブへの参画

TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)

IHIグループは、2019年5月、取締役会での決議を経て、気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures、以下「TCFD」)提言の趣旨に賛同しました。この枠組みを戦略立案のツールとして役立てることで、リスク管理の強化や事業機会の創出につなげます。

GXリーグ基本構想

IHIグループは、2022年2月、経済産業省が公表した「GXリーグ基本構想」に賛同し、2023年4月に参画しました。
「GXリーグ」とは、GX(グリーン・トランスフォーメーション)に積極的に取り組む「企業群」が、GXに向けた挑戦を行う官・学・金のプレーヤーと共に一体となり、経済社会システム全体の変革のための議論と、新たな市場創造のための実践を行う場として設立されたものです。

業界団体との関わり

IHIグループは、一般社団法人 日本産業機械工業会や一般社団法人 日本航空宇宙工業会などのさまざまな業界団体に加盟しています。また、政府・業界団体主催のセミナーなどに参加し情報収集を図り、これを社内共有しています。
IHIグループは、政府・業界団体が設定する気候変動対策の目標に対して、整合もしくは上回るように目標を設定し活動しています。

公共規制への対応と支持

IHIグループは、国内外の各拠点において気候変動などに関する法律・政策・規制などを支持し、適切に対応しています。
特にIHIは、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」(省エネ法)における特定事業者で、エネルギー消費原単位を年平均1%削減する努力義務があります。2023〜2025年度を対象とした「IHIグループ環境活動2023」でも、省エネ法に沿って削減目標を設定しています。各拠点で実施した省エネ施策をグループ内に展開することにより、IHIグループとしてエネルギーの効率利用を推進しています。

ガバナンス

カーボンニュートラル実現に向けた取り組み推進体制

IHIグループは、「気候変動への対策」の取り組み方針や重要事項について、全社委員会である環境委員会で審議・決定しています。
2021年度には、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みを推進するため、部門横断のメンバーで構成されたタスクフォースを設置しました。このタスクフォースは、2023年度までは総務部および経営企画部が事務局として活動してきましたが、この活動を効率的に行い、具体化を加速するために、2024年度より事務局を総務部に集約しました。タスクフォースの活動については、環境委員会で報告し、議論しています。環境委員会における議論の内容はESG経営推進会議に報告し、経営層から受けたフィードバックをグループ全体へ展開しています。
これら会議や委員会における議論のうち、経営上の重要な意思決定に関わるものについては、経営執行における意思決定機関である経営会議での審議を経て、取締役会に付議しています。

カーボンニュートラル実現のための体制

戦略

IHIカーボンニュートラル2050

IHIグループは、パリ協定の努力目標「世界平均気温を産業革命以前と比べて1.5℃に抑える」を達成するために、「IHIカーボンニュートラル2050」を掲げています。
自社の事業活動によって直接・間接に排出される温室効果ガス(Scope1、2)については、2030年度に2019年度比で半減し、2050年には実質排出量ゼロを目指します。短期的な活動としては、「IHIグループ環境活動計画2023」(2023〜2025年度)を定め、2022年度を基準として設備投資によるScope1、2合計 12,000t-CO2e削減、エネルギー消費原単位(売上収益あたりのエネルギー消費量)の3%低減を目標としています。
また、上流および下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)についても2050年の実質排出量ゼロを目指しています。「Scope3削減ロードマップ」を策定し、特に排出量の大きいカテゴリ11(製品使用時)とカテゴリ1(購入した製品・サービス)を中心に削減し、Scope1、2、3全てにおいてカーボンニュートラルを実現していきます。
脱炭素技術を有するIHIグループは、この達成に向けて取り組むことで、グローバルなカーボンニュートラル社会の実現に率先して貢献していきます。

IHIカーボンニュートラル2050

IHIグループは、2050年までに、バリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現する

気候変動に伴うリスクと機会

IHIグループでは、展開する事業のうち、特に気候変動の影響を著しく受ける4つの主要事業(エネルギー事業、橋梁・水門事業、車両過給機事業、民間航空エンジン事業)を対象として、簡易的にシナリオ分析を行いました。
まず、国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC :Intergovernmental Panel on Climate Change)が示す外部シナリオを参照し、移行リスクが大きい「①カーボンニュートラルな世界」と物理的リスクが大きい「②気候変動の影響が甚大な世界」の2つの世界における自社シナリオを設定しました(Step1)。次に、対象とした4つの主要事業について、リスク・機会を洗い出し(Step2)、事業におよぼす影響度を評価しました(Step3)。最後に評価結果を踏まえ、対応策を立案しました(Step4)。
自社シナリオで想定する2つの極端な世界における対応策を講じることで、将来のリスクに対するIHIグループ事業のレジリエンスを高められると考えます。
また、①と②が組み合わさった最も厳しい世界は、それぞれの対応策の組み合わせにより、リスクを低減できると考えます。
4つの主要事業についてリスク・機会の洗い出しとその対応策を、1.その事業に特化しているものと、2.どの事業にも共通しているものに分類しました。
今後は、気候変動の財務への影響評価などを行い、シナリオ分析を事業戦略に生かせるよう、充実させていきます。
IHIグループでは、経営方針や事業戦略の立案において、TCFD提言で求められている考え方を積極的に取り込むことで、自社を含む社会全体の持続的な発展に貢献します。

シナリオ分析のプロセス

参照した外部シナリオ

  • カーボンニュートラルな世界
    IEA 2DS(ETP2017の Global technology penetrations in LDV stock by scenario、Global electricity generationなどを参考に定性的に評価)
  • 気候変動の影響が甚大な世界
    RCP 8.5(IPCC AR5 WG2の風水害リスクに関する部分を参考に定性的に評価)

設定したシナリオ

  1. 移行リスクの大きいシナリオ
    温室効果ガスが一切排出できないために、社会システムが気候変動の緩和に移行する「①カーボンニュートラルな世界」におけるシナリオ
  2. 物理的リスクが大きいシナリオ
    自然の猛威に立ち向かうために物理的な影響への適応が必要な「②気候変動の影響が甚大な世界」におけるシナリオ

1.事業に特化している主なリスク・機会(4つの主要事業について)とその対応策

「①カーボンニュートラルな世界」におけるリスク・機会および主な対応策
エネルギー事業 橋梁・水門事業 車両過給機事業 民間航空エンジン事業
リスク
  • 大型化石燃料発電設備関連の需要減少
  • CO2を大量に排出する素材(セメント、鋼材など)の調達コスト(炭素税など)増加
  • 脱炭素要求に対応できず、エンジン車需要が減少し、既存過給機需要も減少
  • 脱炭素要求や高速代替輸送手段の普及による航空機需要減少
機会
  • 燃料転換やCCUSなど脱炭素化技術の導入需要増加
  • 再エネ普及拡大に伴ったエネルギー需給安定化のための調整電源、蓄エネ、Power to Xの需要増加
  • 交通網の効率化に向けた道路需要の増加(橋・トンネル)
  • 海外での鉄道網の強化に伴う建設需要の増加
  • 脱炭素に向けた電動化車両(PHEV、HEV、FCVなど)に対応する過給機新製品(既存型に加え電動型)の早期市場投入により、市場優位性を確保し、過給機需要が増加
  • 航空機の脱炭素要求に適合したエンジン開発への期待が高まり、電動化や先進材料技術を適用する機会が増大
主な対応策
  • 脱炭素化技術の社会実装の早期化
  • エネルギー需給安定化技術の開発促進
  • 遠隔監視などIoT技術によるライフサイクルビジネスの拡大
  • デジタルトランスフォーメーション(DX)推進による省人化/遠隔化や工法改善による工期および工費の低減
  • 脱炭素要求の動向に対応する電動化車両向け過給機新製品の開発、商品化を加速
  • 電動化や先進複合材などの高度な技術の早期実用化
「②気候変動の影響が甚大な世界」におけるリスク・機会および主な対応策
エネルギー事業 橋梁・水門事業 車両過給機事業 民間航空エンジン事業
リスク
  • 気象災害多発による現場の工事停滞や被災により、工程が大幅に遅延
  • 気象災害多発による現場の工事停滞や被災により、工程が大幅に遅延
  • 気象災害多発によるサプライチェーン寸断により、生産活動が停滞
  • 気象災害多発によるサプライチェーン寸断により、生産活動が停滞
機会
  • 気象災害で損傷した設備の早期復旧への貢献
  • 省人化、遠隔化推進によるデジタル化需要の増加
  • 国土強靭化に向けたインフラ整備の需要が増加
  • 気象災害で損傷したインフラの早期復旧への貢献
  • 事業特有の機会はなし
  • 事業特有の機会はなし
主な対応策
  • 遠隔監視などIoT技術によるライフサイクルビジネスの拡大
  • ライフサイクルビジネスのほか、防災にも視野を広げた事業展開
  • インフラの保全や防災・減災、早期復旧に資する技術・体制の整備
  • サプライチェーンの強靭化
  • サプライチェーンの強靭化

2.どの事業にも共通している主なリスクとその対応策

「①カーボンニュートラルな世界」における移行リスクとその対応策
カテゴリー 主な内容 主な対応策および機会への転換
政策・法規制 炭素税の導入、産業廃棄物の規制強化、再エネ導入・設備更新によるコスト増加など 生産、輸送などの効率化やエネルギー消費量の適切なマネジメントによって、事業活動にかかるコストを低減する
技術 脱炭素化に向けた研究開発のためのコスト増加、技術開発の失敗など 政策・技術・市場などの社会動向を見極めながら、集中的な技術開発投資を行う
市場 CO2排出量の多い製品・サービスに対する需要の低下など 市場の構造の急激な変化に対応できるように、常に複数の事業シナリオを想定した事業計画の立案・推進に取り組む
評判 気候変動への対策が不十分などの評価による受注機会の喪失、社会的信用力の低下など 気候変動の緩和と適応に貢献できる製品・サービスに関する情報を、わかりやすく発信する
「②気候変動の影響が甚大な世界」における物理的リスクとその対応策
カテゴリー 主な内容 主な対応策
急性・慢性 台風や洪水などの自然災害で工場・拠点が被災することによる事業活動の停止など
  • 工場・拠点の事業継続計画において、気象災害への対応を組み込み、従業員の安全確保やサプライチェーンの強化を図る
  • 予測可能な風水害に対する事前対策の策定・実施・運用

リスク管理

IHIグループでは、短期的な事業リスクに加えて、中長期の時間軸で事業環境に変化をおよぼすサステナビリティ関連のリスクについても、事業活動に係るリスクとして管理しています。具体的には、中長期的にIHIグループにおよぼす影響を評価し、それらを短期的な事業リスクに落とし込んでいます。内部監査部門・コーポレート部門・事業領域・事業部門(関係会社を含む)の役割と責任を明確化し、重層的なリスク管理体制の中で管理しています。

指標と目標

IHIグループは、2050年までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルの実現を目指しています。
工場・事務所などにおけるGHG排出量(Scope1、2)については、2023年度に取締役会での決議を経て、2030年度までに2019年度の排出量から半減することを目標としました。

CO2排出量とエネルギー消費量の目標・実績(IHIグループ環境活動計画2023[2023〜2025年度])

活動計画 目標 KPI 基準年度
(2022年度)
の実績
2023年度の実績

達成状況

気候変動への対策 設備投資によるScope1、2合計 12,000t-CO2e削減 GHG排出削減量
(t-CO2e)
(排出量)
215,753
(排出量)
211,970
(削減量)
3,783
2025年度のエネルギー消費原単位を2022年度比で3%低減 エネルギー消費原単位
(TJ/百億円)
17.0 17.6 3.5%増加

GHG排出量(Scope1、2)とエネルギー消費量

(対象:IHIおよび連結子会社)

項目

内訳

2019年度 2020年度 2021年度

第三者検証
の有無

2022年度

第三者検証
の有無

2023年度

第三者検証
の有無

GHG排出量(Scope1+Scope2)(t-CO2e)※1 254,227 225,066 220,138 215,753 211,970

Scope1(t-CO2e)

64,724 58,517 64,270 61,469 65,033

CO2(t-CO2

60,178 63,393

CH4(t-CO2e)

447
(国内のみ)
974
(国内のみ)

N2O(t-CO2e)

85
(国内のみ)
85
(国内のみ)

HFCs(t-CO2e)

469
(国内のみ)
281
(国内のみ)

PFCs(t-CO2e)

0
(国内のみ)
0
(国内のみ)

SF6(t-CO2e)

290
(国内のみ)
299
(国内のみ)

NF3(t-CO2e)

0
(国内のみ)
0
(国内のみ)

Scope2(マーケット基準)(t-CO2

189,503 166,549 155,868 154,284 146,937
GHG排出原単位(t-CO2e/億円)※2、※3 18.3 20.2 18.8 15.9 16.0
エネルギー消費量(TJ)※1 2,468 2,283 2,348 2,294 2,322

燃料消費量(TJ)

1,044 974 1,084 1,019 1,070

電力消費量(TJ)

1,398 1,276 1,229 1,230 1,184

熱消費量(TJ)

7 5 0 0

再生可能エネルギー使用量(TJ)

26 26 31 45 69
エネルギー消費原単位(TJ/百億円)※2、※4 17.8 20.5 20.0 17.0 17.6
  1. 各項目を四捨五入して合計しているため、内訳の合計値と一致しない場合があります。
  2. 原単位の分子はGHG排出量(Scope1+Scope2)、分母は売上収益です。
  3. 2023年度のGHG排出原単位は、特別要因を除けば、14.2t-CO2e/億円です。
  4. 2023年度のエネルギー消費原単位は、特別要因を除けば、15.6TJ/百億円です。

環境情報検証報告書

GHG排出量(Scope3)

IHIグループは、GHGプロトコルおよび環境省が定めるガイドラインに基づき、Scope3排出量を算定しました。Scope3の中で最も多いのは、カテゴリ11(販売した製品の使用)で、次に排出量が多いのはカテゴリ1(購入した製品・サービス)となりました。

サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン

(単位:t-CO2e)

項目

カテゴリ

算定方法 集計範囲 排出量
2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
GHG排出量(Scope3)合計 881,504,000 322,462,000 177,593,000 184,475,000 403,575,000

1 購入した製品・サービス

支出額に基づいて算定 IHIおよび連結子会社 4,930,000 4,075,000 4,197,000 4,665,000 5,130,000

2 資本財

設備投資金額に基づいて算定 IHIおよび連結子会社 270,000 162,000 145,000 205,000 239,000

3 Scope1、2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動

各種エネルギーの消費量に基づいて算定 国内の電力、都市ガス消費分のみ 15,000 14,000 13,000 13,000 13,000

4 輸送、配送(上流)

輸送手段ごとの重量・距離、エネルギーに基づいて算定 IHI 2,000 1,000 1,000 1,000 1,000

5 事業活動から出る廃棄物

廃棄物排出量に基づいて算定 IHIおよび連結子会社 10,000 8,000 8,000 8,000 9,000

6 出張

出張旅費金額に基づいて算定 IHIおよび連結子会社 13,000 14,000 14,000 14,000 14,000

7 雇用者の通勤

通勤交通費支給額に基づいて算定 IHIおよび連結子会社 4,000 4,000 4,000 4,000 4,000

8 リース資産(上流)

Scope1、2に含めて算定

9 輸送、配送(下流)

対象外※1

10 販売した製品の加工

対象外※2

11 販売した製品の使用

製品が消費するエネルギーに基づいて算定※3 IHIおよび連結子会社 876,260,000 318,184,000 173,211,000 179,565,000 398,165,000

12 販売した製品の廃棄

対象外※4

13 リース資産(下流)

カテゴリ11に含めて算定

14 フランチャイズ

対象外※5

15 投資

対象外※6
  1. 多くの製品は据え付け・納入後に輸送されることが少なく、排出量は少量となるため対象外としました。
  2. 完成品を納入することが多く、部品であっても組み立てなどによる排出量は少量となるため対象外としました。
  3. 民間航空エンジンの算定方法については、下記の補足資料をご確認ください。
  4. 多くの製品は金属製であり、リサイクルされることにより最終処分量はわずかで、排出量は少量となるため対象外としました。
  5. IHIグループでは、フランチャイズ形態をとっていないため対象外としました。
  6. 環境省の資料(サプライチェーン排出量算定におけるよくある質問と回答)において、カテゴリ15は民間金融機関向けとされているため対象外としました。

補足資料:民間航空エンジンのScope3カテゴリ11算定方法

IHIグループの民間航空エンジンのScope3カテゴリ11算定方法について説明します。
Scope3カテゴリ11は、企業が販売した製品やサービスが使用される際に排出される温室効果ガス(GHG)の量を指します。
民間航空機は国際民間航空機関(ICAO)により取り決められた国際的な合意に基づき、2050年までにGHG排出量を実質ゼロとすることを求められています。 IHIグループでは、成長事業の一つに位置付けている民間航空エンジン事業においてカーボンニュートラルを実現するためには、エンジンが使用される際のGHG排出量を算定し評価することが重要であると考えています。
IHIグループの民間航空エンジンのScope3カテゴリ11は、当該年度に販売した航空エンジンが使用される際に排出されるGHG量に、航空機全体に対するエンジンの重量比やエンジン開発プログラムへの参画比率を考慮して、次のとおり算定しています。

IHIの民間航空エンジンのScope3カテゴリ11

①当該年度に販売した航空エンジンが生涯使用される際のGHG排出量

販売したエンジンの使用時に消費される燃料量(エンジンの販売数量×エンジンの使用年数×エンジンの年あたりの燃料消費量)に排出原単位(単位燃料消費量あたりのCO2排出量)を乗じて、当該年度に販売した航空エンジンが生涯使用される際のGHG排出量を算定します。
排出原単位は、ICAOが設立した国際航空のCO2削減枠組み(CORSIA)で定められたものを使用しています。また、将来的に持続可能な航空燃料(SAF)の導入などにより変化する分も加味しています。

②航空機全体の重量に占めるエンジン重量の割合

航空エンジンは、航空機全体の一部であるため、(エンジンの重量/航空機の重量)を乗じます。これはGHG排出量を算定・報告する際の国際的な基準であるGHGプロトコルの「Scope3排出量の算定技術ガイダンス」に準じています。
エンジンおよび機体の重量は、欧州航空安全機関(EASA)のデータに基づくもので、乾燥重量を用いています。

③エンジン開発プログラムへの参画比率

民間航空エンジンは、複数の企業が共同で開発を進めます。エンジン開発プログラムに参画する企業は、開発費やマネジメントのリスクをそれぞれで分担しており、その参画比率に応じて事業費を負担し、収益配分を受ける契約形態をとっています。エンジン使用時のGHG排出量もエンジン開発プログラムへの参画比率で各社に割り当てるのが妥当と考えられるため、参画比率を乗じます。

なお、民間航空エンジンのScope3カテゴリ11の算定には、エンジンの整備やスペアパーツの製造は含んでいません。

取り組み

気候変動の緩和(カーボンニュートラルに向けた取り組み)

IHIグループは、2050年までにバリューチェーン全体でカーボンニュートラルを実現することを目指し、自社の事業活動によって直接・間接に排出される温室効果ガス(Scope1、2)だけでなく、自社の上流および下流のプロセスで排出される温室効果ガス(Scope3)の削減に取り組んでいます。

カーボンニュートラルに向けた主な取り組み

Scope3排出量の削減

IHIグループでは、Scope3排出量の大部分がカテゴリ11(販売した製品の使用)で、2023年度の排出量の多くを石炭火力発電用ボイラが占めています。しかし、2025年度までにボイラの新設工事を終了し、2026年度以降は排出量が大幅に減少する見込みです。また、カテゴリ11に含まれる他の製品についても、クリーンエネルギーへの転換やエネルギー消費の効率化を進めることで、2050年までに大幅な削減を目指しています。
IHIグループは、こうした目標の達成に向けて、2050年までにScope3排出量を実質ゼロにするためのロードマップを策定しました。このロードマップに沿って、材料調達・設計・製造からお客さまによる製品使用に至るまで、製品ライフサイクル全体でのGHG排出量削減を進めます。さらに、燃料アンモニアバリューチェーン構築やCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)といったカーボンソリューションによる削減貢献により、カーボンニュートラルな社会の実現を目指します。

主力製品である民間航空エンジンについては、お取引先と協働し、材料調達を含むサプライチェーン全体のカーボンニュートラル化に取り組んでいます。従来形態航空エンジンの燃費改善や革新形態航空エンジンの開発も進めており、航空機全体のエネルギー効率の向上を図っていきます。さらに、SAF(持続可能な航空燃料)の製造技術の開発および利用拡大にも注力し、バリューチェーン全体でのカーボンニュートラルを目指します。他の製品についても、高機能化・高効率化を進め、クリーンエネルギーへの転換を推進しています。
特に注目しているのは燃料アンモニアです。燃料の製造から受け入れ、貯蔵、利活用までの各プロセスでIHIグループの強みを生かし、バリューチェーンを構築していきます。これにより燃料アンモニアの普及・拡大を図り、社会全体のGHG排出量削減に貢献します。

Scope3排出量の実績・見込み
Scope3排出量削減ロードマップ

気候変動への適応のための取り組み

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