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アンモニア燃焼技術の海外展開
アンモニア利用拡大に向けた海外での取り組みと既設ボイラへのアンモニア利用技術の適用

株式会社IHI   

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IHIのアンモニア燃焼技術は海外でも高く注目されており,インド,東南アジア諸国を中心に既設の火力発電所へのアンモニア利用技術の適用に関する引き合いを多数受けている.ここでは,これまでIHIが取り組んできた海外でのアンモニア利用促進に向けた取り組みについて最新情報を紹介する.

アンモニア燃焼技術の海外展開

インド,東南アジア諸国におけるアンモニア利用・燃焼技術の展開

火力発電所の既設ボイラに対するアンモニア利用技術は,インド,東南アジア諸国を中心に海外からも注目されており,IHI以外のボイラメーカーが納入している海外発電所からもアンモニア利用技術の適用に関する引き合いを多数受けている状況である.

インド政府は,2070 年までに温室効果ガス排出量ゼロを目指し,火力発電所における水素・アンモニアの利活用を検討している.今後も電力需要の増大が見込まれていることから,火力発電が必要となっており,燃料としてアンモニアを利用することで火力発電所からのCO₂の排出量削減が期待されている.このような状況のなか,インドのAdani Power Limitedが所有するMundra発電所を対象として,アンモニア利用技術の適用に関する事業性評価を2022 年に実施した.Mundra発電所はBabcock & Wilcox Beijing Co., Ltd.(中国)が納入した対向燃焼方式のボイラが設置されている.対向燃焼方式とは,火炉の前後に向かい合わせに配置したバーナで燃焼する方式である.IHIでは対向燃焼方式のボイラの設計・改造の実績が数多くあり,この知見を活かし,他社製の既設ボイラにIHIのアンモニア利用技術を適用していこうと取り組んでいる.

Adani Power Limited Mundra 発電所

Mundra発電所における事業性評価は,国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 ( NEDO ) の助成を受け実施したものであり,アンモニア利用技術の適用に必要なコストなどを算出することができた.今後,この事例のように,他社製を含む既設ボイラにIHIのアンモニア利用技術を適用していくため,技術評価を燃料試験と数値計算を用いて行い(実証前調査),その後同発電所において実機展開するべく計画を進めている.

マレーシアでは,火力発電所から排出されるCO₂削減の有効手段として,燃料アンモニアの利用が注目されている.インドでの事例と同じように,マレーシアにあるTanjung Bin発電所においても,アンモニア利用技術の適用に関する事業性評価を2022 年に実施した.Tanjung Bin発電所には,対向燃焼方式のボイラに加えて旋回燃焼方式のボイラも設置されている.旋回燃焼方式のボイラは,IHIが得意とする対向燃焼方式とは異なり,火炉中心に火炎の渦を形成させる燃焼方式である.IHIグループ会社の一つであるドイツのSteinmüller Engineering GmbHは旋回燃焼方式のボイラに関して設計・改造実績が豊富なことから,燃料アンモニアの適用方針を同社と協調をとって検討を開始した.旋回燃焼方式のボイラはインドネシアなどにも多数建設されており,燃料アンモニアの利用が可能となれば,その市場は非常に大きなものとなると考えられる.

燃焼方式の違い

インドネシアでは,火力発電用ボイラに対するアンモニア利用技術に注目が集まっている.インドネシアのGresik発電所1 号機では,2022 年10 月に天然ガスとアンモニアの少量利用技術の実証試験を実施した.同機のボイラはIHIが納入した重油焚きボイラであるが,後に天然ガス焚きボイラに改造されている.IHIではこの実証試験におけるアンモニア系統計画,手配,燃焼器の供給などを行い,インドネシア政府の関係者が見守るなか,アンモニア少量利用技術の実証試験に成功した.これはASEAN諸国では初めてとなる実機を用いた実証試験であり,その成果は翌11 月に同国で開催されたG20に関連する会議で世界中に報告された.インドネシアにおいても増大する電力需要に応えつつ,火力発電所から排出されるCO₂の削減に向けてカーボンフリー燃料の適用が検討されており,この実機を用いた実証試験の成功はその第一歩と位置付けられている.今後はインドネシアの電力会社および政府と連携し,同国における火力発電所からのCO₂排出量削減を実現すべく,アンモニア利用・燃焼技術の積極的な展開を図っていく.

Gresik 発電所および実証試験におけるセレモニーの様子

燃料アンモニアの需要拡大とサプライチェーン構築に向けて

IHIグループは現在,燃料としてのアンモニアの生産から輸送・貯蔵およびその利用といったすべてのプロセスにおいて技術開発を行っている.アンモニアの火力発電用ボイラや産業炉への適用といった利用拡大の動きは,このようなアンモニアのサプライチェーンの構築を考えるうえでも非常に重要となっており,アンモニアの利用を拡大できると,その上流におけるアンモニアの製造・輸送面においても量産効果によってコスト低減が期待できる.IHIグループはアンモニアのサプライチェーン構築をつうじて,カーボンニュートラル社会の実現に向け,グループ一丸となって取り組んでいく.