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三次元構造を適用した低熱抵抗・低インダクタンスの片面冷却パワーモジュール

久持裕史,野武幸輝,高橋芳明,山口浩二   

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久持 裕史 株式会社IHI 技術開発本部 技術基盤センター 制御・数理工学技術部
野武 幸輝 株式会社IHI 技術開発本部 技術基盤センター 制御・数理工学技術部
高橋 芳明 株式会社IHI 技術開発本部 技術基盤センター 制御・数理工学技術部
山口 浩二 株式会社IHI 技術開発本部 統合開発部 博士(工学)

本稿では,リードフレームを熱伝導経路として用い,両面に配置されたパワー半導体チップを冷却する片面冷却パワーモジュールの三次元構造を提案する.提案構造は,低熱抵抗と低インダクタンスを両立し,モータ駆動用インバータの高効率化を実現する.シミュレーション結果では,従来構造パワーモジュールと比較して,熱抵抗は18%低減し,転流経路の寄生インダクタンスは60%低減することを確認した.試作により提案構造パワーモジュールの製造性を検証し,ダブルパルステスト(800 VDC,ターンオン電流300 A,ターンオフ電流400 A)により,その電気的性能を検証した.

This paper describes the three-dimensional structure of a single-sided cooling power module that uses a lead frame as a heat conduction path to cool power semiconductor dies on both sides. The proposed structure achieves low thermal resistance and low inductance, improving the efficiency of motor drive inverters. Simulation results show that the thermal resistance is reduced by 18% and the parasitic commutation loop inductance is reduced by 60% compared to the conventional module. The manufacturability of the proposed module is confirmed by fabricating prototypes, and double pulse tests (800 VDC, turn-on current of 300 A, turn-off current of 400 A) validate its electrical performance.


1. 緒言

自動車や航空機などの移動体の電動化が脱炭素社会の実現に向けて進展する中,エネルギー消費量を削減するために,モータ駆動用インバータの高効率化が求められている.近年,高速スイッチングと低オン抵抗による電力損失の低減を実現するため,従来のシリコン絶縁ゲートバイポーラトランジスタ( silicon insulated-gate bipolar transistor:Si-IGBT )から,炭化ケイ素金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ( silicon carbide metal-oxide-semiconductor field-effect transistor:SiC-MOSFET )への置き換えが進んでいる ( 1 ) ~( 3 ).しかし,高速スイッチングによって高いサージ電圧が発生するため,絶縁破壊や電磁干渉( electromagnetic interference:EMI )の増加を引き起こす恐れがある ( 4 ),( 5 ).モータ駆動用インバータに用いられるハーフブリッジパワーモジュールにおいては,転流経路の寄生インダクタンスを低減することでサージ電圧を抑制できる.これによって,高速スイッチングによるスイッチング損失の低減とサージ電圧の低減を両立することが可能となる.

ハーフブリッジパワーモジュールにおける転流経路の寄生インダクタンスの低減を実現するために,三次元構造を適用したパワーモジュールが報告されている ( 6 ) ~( 10 ).第1図に両面冷却パワーモジュールを示す.第1図 - ( b )に示す三次元構造では,上アームのMOSFETのソース電極と下アームのMOSFETのドレイン電極間を結ぶ電気的経路が- ( a )のそれよりも大幅に短くなっている.その結果,第1図 - ( b )のDC+電極とDC−電極間の寄生インダクタンスは,- ( a )のそれよりも大幅に小さくなる.

先行研究では,三次元構造パワーモジュールには両面冷却が適用されている.もし片面冷却ハーフブリッジパワーモジュールに三次元構造を適用すると,下アームのMOSFETとヒートシンク間の熱抵抗は,上アームのMOSFETとヒートシンク間の熱抵抗よりも高くなってしまう.これは,熱伝導経路であるMOSFETのソース電極のサイズがドレイン電極よりも小さく,また絶縁距離を確保するためにソース電極とDBC基板(Direct Bonded Copper:表面に銅箔(はく)を接合した絶縁基板)の間に導電性スペーサを配置する必要があるためである.

第1 図 両面冷却パワーモジュール Fig. 1 Double-sided cooling power module
第1図 両面冷却パワーモジュール
Fig. 1 Double-sided cooling power module

インバータのレイアウト設計の観点からは,DCリンクコンデンサとゲートドライバ基板の両方をパワーモジュールに近接して配置することが望ましい.しかし,両面冷却パワーモジュールは上下面がヒートシンクで囲まれているため,DCリンクコンデンサとゲートドライバ基板を接続するためのインタフェースが限られている.そのため,DCリンクコンデンサとゲートドライバ基板の両方を両面冷却パワーモジュールの近くに配置することが困難である.もしDCリンクコンデンサがパワーモジュールから離れて配置されると,転流経路の寄生インダクタンスが増加し,サージ電圧が高くなってしまう.また,ゲートドライバ基板がパワーモジュールから離れて配置されると,ゲート駆動信号の立ち上がり時間と立ち下がり時間が増加し,スイッチング速度の低下による電力損失が増加してしまう.

したがって,高効率なモータ駆動用インバータを実現するためには,ヒートシンクの配置よりも優先してDCリンクコンデンサとゲートドライバ基板をパワーモジュールの近くに配置することが重要である.つまり,パワーモジュールの周囲はDCリンクコンデンサとゲートドライバ基板によって囲まれることになる.その結果,パワーモジュール表面からヒートシンクへの熱伝導経路の面積が制限される.

以上の課題から,本稿では三次元構造を適用することで,低熱抵抗と低インダクタンスの両立を実現する片面冷却ハーフブリッジパワーモジュール構造を提案する.

2. 片面冷却パワーモジュール構造の提案

2.1 低熱抵抗と低インダクタンスを実現する構造

第2図に,ハーフブリッジパワーモジュールの回路図を示す.第3図に,提案する片面冷却ハーフブリッジパワーモジュールの構造を示す.リードフレームの凸部は上アームのSiC-MOSFETのソース電極に直接はんだ付されており,上アームのSiC-MOSFETのソース電極と下アームのSiC-MOSFETのドレイン電極間の電気抵抗および寄生インダクタンスを低減することを目的としている.この凸部は,上アームのSiC-MOSFETのソース電極から,リードフレーム中央部の凸部を介して,DBC基板への熱伝導経路も形成している.この構造によって,上アームのSiC-MOSFETで発生した熱は,ソース電極とドレイン電極の両方からDBC基板を介してヒートシンクに伝達される.

第2 図 ハーフブリッジ回路図 Fig. 2 Half-bridge configuration
第2図 ハーフブリッジ回路図
Fig. 2 Half-bridge configuration
第3 図 三次元構造片面冷却パワーモジュールの断面図 Fig. 3 Cross section of three-dimensional single-sided cooling power module
第3図 三次元構造片面冷却パワーモジュールの断面図
Fig. 3 Cross section of three-dimensional single-sided cooling power
module

導電性スペーサは,下アームのSiC-MOSFETのソース電極とDBC基板の銅箔の間にはんだ付され,下アームの電流経路を形成すると同時に,下アームのSiC-MOSFETのソース電極からDBC基板への熱伝導経路も形成している.また,上アームのSiC-MOSFETのソースパッドの場合と同様に,下アームのSiC-MOSFETのドレイン電極からも,リードフレーム中央部の凸部を介してDBC基板への熱伝導経路が形成されている.その結果,下アームのSiC-MOSFETで発生した熱はソース電極とドレイン電極の両方からDBC基板を介してヒートシンクに伝達される.

これらの特長により,DBC基板の下側銅箔のみにヒートシンクが取り付けられた片面冷却パワーモジュールであるにもかかわらず,上アームと下アームのSiC-MOSFETで発生した熱は,ドレイン電極とソース電極の両方から伝達されるので,熱抵抗を低減することができる.

さらに,リードフレームは熱伝導経路だけでなく,太く短い電流経路も形成するため,ハーフブリッジパワーモジュールの転流経路であるDC+電極とDC−電極間の寄生インダクタンスを,従来の構造に比べて低減することができる.

2.2 熱シミュレーション

提案構造パワーモジュールの熱抵抗を評価するため,Femtet(ムラタソフトウェア社製)を用いて熱シミュレーションを実施した.第4図に,SiC-MOSFETのソース電極の接続にアルミワイヤを用いた,従来構造パワーモジュール(片面冷却)のモデルを示す.アルミワイヤの総断面積は1.15 mm2である.第5図に,提案構造パワーモジュール( Type A )のシミュレーションモデルを示す.第1表に,提案構造パワーモジュール( Type A )の熱シミュレーションで使用した材料特性を示す.

シミュレーション結果を比較するため,従来構造およびType Aの両モデルとも,DBC基板の下側は同一サイズ・形状で銅面積1,600 mm2 ( 40 × 40 mm )とした.並列接続したSiC-MOSFETの数も両モデルとも4 個で同一とした.熱シミュレーションでは,片面(DBC基板の下側銅箔)に取り付けられたヒートシンクへの熱伝導のみを考慮し,それ以外のパワーモジュール表面は断熱条件とした.ヒートシンクの熱伝達係数は5,000 W/(m2·K)とした.

第4 図 従来の片面冷却パワーモジュール構造 Fig. 4 Conventional single-sided cooling power module
第4図 従来の片面冷却パワーモジュール構造
Fig. 4 Conventional single-sided cooling power module
第5 図 提案するパワーモジュール構造 ( Type A ) Fig. 5 Proposed power module ( Type A ) with the transparency of the lead frame changed
第5図 提案するパワーモジュール構造 ( Type A )
Fig. 5 Proposed power module ( Type A ) with the transparency of the
lead frame changed
第1 表 熱シミュレーションに用いた提案構造パワーモジュール ( Type A ) の材料特性 Table 1 Material properties of proposed power module ( Type A ) in thermal simulation
第1表 熱シミュレーションに用いた提案構造パワーモジュール
( Type A ) の材料特性
Table 1 Material properties of proposed power module ( Type A ) in
thermal simulation

第6図に,提案構造パワーモジュール( Type A )の上アームおよび下アームそれぞれのSiC-MOSFETとヒートシンク間の熱抵抗Rj-cのシミュレーション結果を示す.第6図の横軸は,パラメータとしてリードフレーム厚さを示している.また第6図の縦軸は,従来構造との比較のため,従来構造の熱抵抗値を100%とした場合の,Type Aの熱抵抗値を相対的に示している.熱シミュレーションの結果,Type Aは,従来構造と比較して熱抵抗が18%低減していることを確認した.第7図は,SiC-MOSFETの1 個当たりの損失が50 W,パワーモジュール全体の初期温度を85℃とした場合の,提案構造パワーモジュール( Type A )の温度分布を示している.

第6 図 熱シミュレーション結果 Fig. 6 Thermal simulation results
第6図 熱シミュレーション結果
Fig. 6 Thermal simulation results

Type Aの上アームの熱抵抗Rj-cは従来構造よりも低くなっている.これは,SiC-MOSFETの熱がドレイン電極からDBC基板を介してヒートシンクに放熱される従来構造と同様の熱伝導経路に加えて,ソース電極からリードフレームを介して伝熱する新たな経路が追加されたためである.

Type Aの上アームの熱抵抗Rj-cは,リードフレーム厚さを変えても大きく変化しない.これは,従来構造と同様に,DBC基板を介してヒートシンクに熱を伝える経路が,リードフレームを介して熱を伝える経路よりも支配的であることを示している.

Type Aの下アームの熱抵抗Rj-cは,リードフレーム厚さが1.1 mm以下の場合,従来構造よりも大きくなる.これは,第6図に示すように,下アームの熱抵抗が100%を上回っていることを意味する.これは,下アームのSiC-MOSFETからの熱がソース電極に接続された導電性スペーサを介してDBC基板へと放熱されること,そしてソース電極はドレイン電極よりも面積が小さいことから,DBC基板を通じてヒートシンクへ至る熱伝導経路の熱抵抗が,従来構造よりも高くなることを示している.

第7 図 提案構造パワーモジュール ( Type A ) の熱分布 Fig. 7 Temperature distribution of the proposed power module ( Type A )
第7図 提案構造パワーモジュール ( Type A ) の熱分布
Fig. 7 Temperature distribution of the proposed power module ( Type A )

一方で,Type Aの下アームの熱抵抗Rj-cは,リードフレーム厚さに対する感度が高く,リードフレーム厚さが5 mm以上では上アームの熱抵抗Rj-cよりも低くなる.これは,ドレイン電極からリードフレームを通る熱伝導経路の方が,DBC基板を通ってヒートシンクへ至る熱伝導経路よりも支配的になることを示している.5 mmの厚さは銅リードフレームとしては大きい値であるが,グラファイトなどの高異方性熱伝導材料をリードフレームに適用することで,その厚さを低減できる可能性がある.

2. 3 寄生インダクタンスシミュレーション

提案構造パワーモジュールの転流経路の寄生インダクタンスを評価するため,第4図と第5図に示したシミュレーションモデルに対して,熱シミュレーションでも使用したFemtetを用いて寄生インダクタンスシミュレーションを実施した.

シミュレーションの結果,Type Aの転流経路の寄生インダクタンスは,リードフレーム厚さが2 mmの場合,従来構造と比較して35%低減された.第8図に,提案構造パワーモジュール( Type A )の電流密度分布シミュレーション結果を示す.電流は上下各アームに4 並列接続されたSiC-MOSFETに均等に分布しておらず,DC+電極付近とDC−電極付近のそれぞれ端部のSiC-MOSFETに集中していることが分かる.このように電流が集中すると,特に高周波スイッチング動作時にはSiC-MOSFET間の温度が不均一となってしまうため好ましくない.

第8 図 提案構造パワーモジュール ( Type A ) の電流密度 Fig. 8 Current density of proposed power module ( Type A )
第8図 提案構造パワーモジュール ( Type A ) の電流密度
Fig. 8 Current density of proposed power module ( Type A )

第9図に提案構造パワーモジュール( Type B )を示す.これはType Aと比較すると,上下アームのSiC-MOSFETの配置を90 度回転させたものである.第10図に,提案構造パワーモジュール( Type B )の電流密度分布シミュレーション結果を示す.Type Bの下アームに4 並列接続されたSiC-MOSFETには電流がほぼ均等に分布していることが分かる.上アームでは,両端のSiC-MOSFETに僅かな電流集中が見られるが,Type Aと比較して電流集中が低減していることが分かる.

第9 図 提案する片面冷却パワーモジュール構造 ( Type B ) Fig. 9 Proposed power module ( Type B ) with the transparency of the lead frame changed
第9図 提案する片面冷却パワーモジュール構造 ( Type B )
Fig. 9 Proposed power module ( Type B ) with the transparency of the
lead frame changed
第10 図 提案構造パワーモジュール ( Type B ) の電流密度 Fig. 10 Current density of proposed power module ( Type B )
第10図 提案構造パワーモジュール ( Type B ) の電流密度
Fig. 10 Current density of proposed power module ( Type B )

さらに,Type Bの磁界打ち消し効果はType Aよりも大きい.その結果,第2表に示すとおり,従来構造と比較して提案構造パワーモジュール( Type B )の転流経路の寄生インダクタンスが60%低減する.

第2 表 転流経路のインダクタンス比較 Table 2 Comparison of commutation loop inductance
第2表 転流経路のインダクタンス比較
Table 2 Comparison of commutation loop inductance

提案構造パワーモジュール( Type A )における磁界打ち消し効果の評価結果を第3表に,提案構造パワーモジュール( Type B )の評価結果を第4表に示す.Type Aでは,DBC基板の下側銅箔があることで,転流経路の寄生インダクタンスが26.5%低減していることが分かる.同様に,Type Bでは,DBC基板の下側銅箔があることで,転流経路の寄生インダクタンスが49.6%低減している.DBC基板の下側銅箔による磁界打ち消し効果は,Type AよりもType Bの方が大きい.

さらに,第11図に示すように,提案構造パワーモジュール( Type B )では,DC+電極に接続されたDBC基板の上側銅箔を流れる電流と,リードフレームを流れる電流の向きが互いに逆となるため,磁界が打ち消される.第12図は,提案構造パワーモジュール( Type B )のリードフレームから,DC+電極に接続されたDBC基板の上側銅箔と重なる部分を削除したシミュレーションモデルである.またリードフレーム厚さを2.0 mmから2.7 mmに変更し,リードフレームの断面積は同じにしている.第4表に示すように,リードフレームがあることで転流経路の寄生インダクタンスは21.4%低減する.

第3 表 提案構造パワーモジュール ( Type A ) の磁界打ち消し効果 Table 3 Magnetic field cancellation effect for proposed power module ( Type A )
第3表 提案構造パワーモジュール ( Type A ) の磁界打ち消し効果
Table 3 Magnetic field cancellation effect for proposed power module
( Type A )
第4 表 提案構造パワーモジュール ( Type B ) の磁界打ち消し効果 Table 4 Magnetic field cancellation effect for proposed power module ( Type B )
第4表 提案構造パワーモジュール ( Type B ) の磁界打ち消し効果
Table 4 Magnetic field cancellation effect for proposed power module
( Type B )
第11 図 リードフレームによる磁界打ち消し効果 Fig. 11 Magnetic field cancellation effect by the lead frame
第11図 リードフレームによる磁界打ち消し効果
Fig. 11 Magnetic field cancellation effect by the lead frame
第12 図 提案構造パワーモジュール ( Type B ) からDC+ 電極に 接続された銅箔と重なる部分のリードフレームを削除 したモデル Fig. 12 Proposed power module ( Type B ) without the lead frame covering DC+ copper layer, with the transparency of the lead frame changed
第12図 提案構造パワーモジュール ( Type B ) からDC+ 電極に
接続された銅箔と重なる部分のリードフレームを削除
したモデル
Fig. 12 Proposed power module ( Type B ) without the lead frame
covering DC+ copper layer, with the transparency of the lead
frame changed

3. パワーモジュールの試作評価

3.1 パワーモジュールの試作

提案構造の製造性を確認するため,パワーモジュールを試作した.第13図にパワーモジュールの写真を示す.リードフレーム中央の凸部とDBC基板の上側銅箔との間のはんだ付面積が大きいため,この領域でははんだの内部にボイド(空隙)が発生しやすくなる.ボイドが存在すると熱抵抗を大幅に増加させてしまう可能性がある.第14図にX 線CTで撮影した断面画像を示す.リードフレームの凸部とDBC基板の上側銅箔との間のはんだボイド率は,提案構造パワーモジュール( Type A )で3.95%,提案構造パワーモジュール( Type B )で4.52%であった.この結果,ボイドの存在により熱抵抗が著しく増加することはないことが確認できた.

3.2 スイッチング試験および結果

提案構造パワーモジュールの電気的特性を確認するため,ダブルパルス試験を実施した.第15図に,ダブルパルス試験のセットアップを示す.第16図に,800 VDC,300 Aにおけるターンオン時の試験波形を示す.さらに,第17図に,800 VDC,400 Aにおけるターンオフ時の試験波形を示す.ドレイン電流波形およびドレイン-ソース間電圧波形は,ターンオン時およびターンオフ時ともに安定した遷移を示した.試験結果から,提案構造パワーモジュールType AおよびType Bが通常のスイッチング動作において問題なく動作可能であることを確認した.試作したパワーモジュールが電気的に正常に動作したことから,提案構造とその組立工程の実現性が確認できた.

第13 図 試作機 Fig. 13 The prototypes
第13図 試作機
Fig. 13 The prototypes
第14 図 X 線CT 撮影による断面図 Fig. 14 Cross-sectional images taken by X-ray CT
第14図 X 線CT 撮影による断面図
Fig. 14 Cross-sectional images taken by X-ray CT
第15 図 ダブルパルス試験のセットアップ Fig. 15 Double pulse test setup
第15図 ダブルパルス試験のセットアップ
Fig. 15 Double pulse test setup
第16 図 ダブルパルス試験ターンオン時の波形 Fig. 16 Turn-on switching waveforms in double pulse test
第16図 ダブルパルス試験ターンオン時の波形
Fig. 16 Turn-on switching waveforms in double pulse test
第17 図 ダブルパルス試験ターンオフ時の波形 Fig. 17 Turn-off switching waveforms in double pulse test
第17図 ダブルパルス試験ターンオフ時の波形
Fig. 17 Turn-off switching waveforms in double pulse test

3.3 試験による寄生インダクタンスの評価

試験波形のリンギング(共振)周波数を用いて,寄生インダクタンスは( 1 ) 式で計算することができる.

(1)

このとき,fは電圧のリンギング(共振)周波数である.Cは寄生容量であり,4 並列されたSiC-MOSFETの出力容量(MOSFET 1 個当たり209 pF),OUTPUT電極(リードフレーム)とDC−電極に接続された銅箔間の静電容量,およびパワーモジュール内部の異なる導体間の結合効果によって生じる静電容量を含む.Femtetでシミュレーションした結果,OUTPUT電極(リードフレーム)とDC−電極に接続された銅箔間の静電容量は,従来構造パワーモジュールでは7.6 pF,Type Aでは11.8 pF,Type Bでは11.2 pFであった.結合効果によって生じる静電容量は,従来構造パワーモジュールでは43.9 pF,Type Aでは51.1 pF,Type Bでは44.5 pFであった.LはパワーモジュールとDCリンクコンデンサ間の寄生インダクタンスである.

第5表に,第17図 - ( b )から計算した寄生インダクタンスを示す.第5表に示す寄生インダクタンスは,提案構造パワーモジュール( Type B )が最も小さく,次に提案構造パワーモジュール( Type A ),そして従来構造パワーモジュールの順になっている.この結果は,第2表に示したシミュレーション結果の傾向と一致している.

第5 表 試験結果から導出した寄生インダクタンスの比較 Table 5 Comparison of measured parasitic inductance
第5表 試験結果から導出した寄生インダクタンスの比較
Table 5 Comparison of measured parasitic inductance

4. 結言

本稿では,2 種類のハーフブリッジ回路の片面冷却パワーモジュールを提案した.これらのパワーモジュールは,三次元構造を適用することで,低熱抵抗および低インダクタンスを実現している.ヒートシンクは片面にのみ実装される一方,上下アームに配置されたSiC-MOSFETはソース電極およびドレイン電極の両面から冷却される構造とした.

シミュレーション結果から,提案構造パワーモジュール( Type A )は,従来構造パワーモジュールと比較して,熱抵抗が18%低減し,転流経路の寄生インダクタンスが35%低減することを示した.さらに,並列接続されたSiC-MOSFET間の電流バランスを改善した提案構造パワーモジュール( Type B )では,従来構造パワーモジュールと比較して,転流経路の寄生インダクタンスが60%低減することを明らかにした.提案構造パワーモジュール( Type A )および提案構造パワーモジュール( Type B )を試作し,ダブルパルス試験(800 VDC,ターンオン電流300 A,ターンオフ電流400 A)を実施することで,提案構造の実現性を確認した.今後は,試験結果による提案構造パワーモジュールの熱抵抗を検証するとともに,転流経路の寄生インダクタンスの詳細な評価を実施する予定である.

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Reprinted with permission from IEEE from the proceedings of the 2025 IEEE Applied Power Electronics Conference and Exposition ( APEC ).