ガバナンス
IHIグループでは、サプライチェーン上のカントリーリスクや自然災害リスクを含む広範な観点のリスクマネジメントについて、本社部門による施策立案と事業部門による施策実施の後、CEOを議長とするリスク管理会議において成果を共有、議論しています。
また、サプライチェーンにおける人権課題に関わる活動方針や施策およびその結果をグループESG担当役員が委員長を務める人権DE&I委員会において共有し、議論しています。
2025年度は、リスク管理会議に対しては四半期1回ごとに報告を行ない、人権DE&I委員会に対しては年3回報告を行いました。
リスク管理会議
人権DE&I委員会
リスク管理
サプライチェーンの強靭化
IHIグループは、近年発生している自然災害、感染症、紛争、CSR調達視点のリスクなどによって、生産を含めた事業活動が停滞することのないよう、サプライチェーンを強靭化する活動をグローバルに推進しています。
主要な原材料・部品の市況動向については日頃から情報収集して安定調達に努めるとともに、調達先の品質・納期などの管理を徹底し、特定の調達先への過度の集中・依存を避けるために調達先の分散化などを進めています。
各種リスクに影響を受けにくいサプライチェーン構築を進めるため、特に事業継続に不可欠な重要サプライヤーを抽出した上で、さまざまな評価ツールを活用しサプライチェーン強靭化の対象となる取引先を選定しています。
評価ツールには、第三者機関によるESGリスク評価、取引先の経営リスク評価、情報セキュリティや災害時の事業継続計画に関する聞き取りを含みます。
重要取引先の選定
IHIグループは、以下の観点から事業上重要な取引先を特定し、重点的なリスク管理を行っています。
発注部材や工程の重要性
年間発注額の多寡
代替困難性 など
2025年度は、一次取引先から510社、二次取引先から102社を重要取引先として特定しました。IHIグループが取引を行う8,970社の一次取引先のうち、一次重要取引先510社の調達金額の割合は41%となりました。
取引先のサステナビリティ評価
サステナビリティ評価サービス「EcoVadis」の活用
IHIグループは、サプライチェーンに関する第三者評価プラットフォームであるEcoVadis社と2024年6月に契約を締結し、サプライチェーンリスクを適切かつ公正に評価するための体制を整えました。
取引先にはEcoVadis社の実施するサステナビリティ評価を受けることを促し、評価上問題がない場合は優良サプライヤーとして管理し、懸念があれば、必要に応じて追加の聞き取り調査を実施するなど、サプライチェーン全体のリスク管理体制を構築していきます。コンプライアンス違反などの公開されたニュースは即座にピックアップされ、渦中の取引先に対して迅速な対応が可能となります。
なお、EcoVadis社のサステナビリティ評価は、「国連グローバル・コンパクトの10原則」「国際労働機関(ILO)条約」「グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)スタンダード」「ISO26000」「セリーズ(CERES)ロードマップ」および「国連ビジネスと人権に関する指導原則」など、主要な国際基準に基づいて実施されています。2025年度の実績※ においては、検収総額のうち51%を占める取引先あるいはその親会社(取引先数877社)から「EcoVadis」の評価結果の共有をいただいており、そのうち取引先あるいはその親会社のいずれかが総合スコア45点以上の取引先が、90%を占めています。なお、877社には重要取引先のうち20%(94社)が含まれています。
2025年度検収分。対象は、IHIおよび国内関係会社27社
セルフチェックシートによるサプライヤー管理
IHIグループでは、JEITAの「責任ある企業行動ガイドライン」およびResponsible Business Alliance(RBA)行動規範を参考に「IHIグループ取引先行動指針」を策定し、取引先に対し展開しています。また、この指針に基づく「セルフチェックシート」について一部の取引先に回答をお願いし、課題の認識とさらなるCSR活動への取り組みを求めています。
これまでに、訪問対話の事前ヒアリングおよび一部工事における重要取引先の事前審査の一環として、「セルフチェックシート」を381社回収しました。そのうち136社は重要取引先からの回収です。
一方で、「セルフチェックシート」によるサプライヤー管理においては、調査に伴う作業負荷に加え、評価の妥当性・透明性の確保や、最新のグローバル基準への対応が課題となっていました。このため、IHIグループでは、CSR活動をより効率的かつ適正に進めるため、「セルフチェックシート」を段階的に廃止し、第三者評価である「EcoVadis」の活用へ移行する予定です。
大型プロジェクト案件の受注前審査における取引先のESG評価
IHIグループでは、2023年度より、予想請負金が一定額以上のプロジェクト案件を対象に、採用候補となる取引先の一部を選定し、ESG評価を実施しています。2024年度までは「セルフチェックシート」による評価を行っていましたが、2025年度から新たに「EcoVadis」を活用した評価を導入しました。
2025年度は、20件のプロジェクト案件を対象に、延べ130社のESG評価を実施し、そのうち31社については「EcoVadis」を用いた評価を行いました。その結果、3社でリスクが認められたため、改善に向けた是正対応を要請しています。今後も、段階的に「EcoVadis」を活用した評価への移行を進めていく方針です。
CSR活動推進のプロセス
取引先とのエンゲージメント強化
「IHIグループ取引先行動指針」の周知・浸透
IHIグループは、「IHIグループ取引先行動指針」をウェブサイトで公開するだけでなく、通達文や説明会などを通じて既存の取引先に周知しました。新規契約に関しては、本指針を尊重することが明記された基本契約書を適用しています。
また、取引先におけるCSR活動の支援として、「ビジネスと人権」「カーボンニュートラルと環境」「公正取引」をテーマとした合同セミナーをアジア4拠点で開催しました。さらに2025年度は、ESGおよび危機管理に関する意識向上を図るため、国内一次重要取引先のうち、従業員20名以下の企業および各調達部門が指定した企業を対象に、外部e-ラーニングサービスの提供を開始しました。
2025年度の開催実績は下表のとおりです。
サプライチェーンの強靭化に向けた重要取引先との対話
IHIグループでは、サプライチェーンの強靭化のため、各種評価ツールの活用や重要取引先への直接の聞き取りを通じ、重要取引先の経営リスクや情報セキュリティリスク、災害リスクなどを評価しています。評価の結果、IHIが独自に設定した評価基準を下回った重要取引先を抽出し、訪問による対話を実施した上で、課題の把握やリスクの低減に向けた指導・提案を行っています。2025年度は、国内の一次重要取引先146社を訪問し、対話を実施しました。
また、2024年度から実施している、サステナビリティに関して取引先の課題をヒアリングするための対話活動についても継続して実施しています。本対話では、取引先における日頃のCSR調達への取り組み状況を確認するとともに、さらなる改善に向けた協力について前向きな意見交換を行うことを主旨としています。
2025年度は、重要取引先を含む12社※ から課題の聞き取りを実施しました。
日本6社、ベトナム3社、マレーシア3社
「EcoVadis」を活用した情報提供
IHIグループでは、2024年度より、取引先およびその親会社のご協力の下、EcoVadis社のサステナビリティ評価を活用しています。2025年度からは、ESGリスク管理におけるサプライチェーンの協働を一層強化することを目的に、サステナビリティ評価にご協力いただいた取引先に対し、IHIグループのサプライチェーンリスク管理の状況をまとめたフィードバックレポートの発行を開始しました。フィードバックレポートを通じて、CSR調達に関する意見交換も始まっており、引き続きサプライチェーンの皆さまと協働したリスク管理を進めていきます。
人権リスク低減活動
外国人非正規労働者に対しての積極的な対話
IHIグループは、2023年より「リスク低減活動」として、一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)の協力の下、IHIおよび国内子会社の拠点に在籍する外国人非正規労働者に対して積極的対話(直接のインタビュー)を実施しています。本活動を通じて、法令・規範上の懸念や、安全衛生・習慣上の課題が明らかになったため、外国人非正規労働者が在籍するIHIおよび国内子会社の全拠点を対象に、リスク低減に向けた是正措置を実施しています。2025年度は、外国人技能実習生が脆弱な立場にあり人権リスクが高いことを踏まえ、外国人技能実習生を雇用している構内協力会社が存在する拠点の中から2拠点を選定し、ASSC立会いの下、これまでの積極的対話に加えて、構内および寮の現地調査を初めて実施しました。なお、2023年11月~2026年2月にかけて、国内延べ10拠点において、延べ68名の外国人非正規労働者と積極的対話(直接のインタビュー)を実施しました。このうち49名は、構内協力会社が雇用・受け入れしている外国人非正規労働者です。
反社会的勢力と贈収賄防止への対応
IHIグループは、取引先との契約条項に反社会的勢力と一切関係を持たないこと、刑法・不正競争防止法で禁止されている外国公務員への贈賄行為、そのほか、各国の法令で禁止されている贈収賄などの行為は行わないことを定めています。これらの行為があった場合は、報告と調査への協力を取引先に求めています。
従業員への教育・浸透
IHIグループでは、調達関連法規および業務規程に関する教育に注力するとともに、業務の中で遵守状況を点検し、必要な改善を行うことで、コンプライアンスの強化を図っています。持続可能なサプライチェーンの構築を実現する調達人財の育成を目的とした「調達プロフェッショナル育成研修」では、従来の対面型研修に加え、オンデマンドによる動画配信を導入しています。受講者の利便性を高めることで、学習および学び直しの機会を拡大し、法規・規程に対する理解の浸透を図っています。
また、調達関連部門に限らず、IHIおよび国内関係会社36社の従業員を対象に、CSR調達の内容を含むe-ラーニングによる一斉教育を実施しています。これにより、法規・規程および社会的要請に対する理解と対応力の向上を図っています。2025年度は、対象従業員のうち85%がe-ラーニングを受講しました。
さらに、2024年度からは、調達費用の上昇に対応するため、価格査定力の向上を目的とした教育を継続して実施しています。加えて、持続可能なサプライチェーンの構築に向け、グループ中堅社員を対象としたサプライチェーン・マネジメント教育を2026年度から開始する予定です。
これからの調達業務に求められるスキルの向上を通じて、従業員のエンゲージメントおよび満足度の向上にも努めています。
紛争鉱物を含む「鉱物資源の責任ある調達」
IHIグループは、紛争鉱物に関する取り組みを主導する団体Responsible Minerals Initiative(RMI)の趣旨に賛同しています。IHIグループは、当面の調査対象鉱物として、RMIの認定業者の多いスズ、タンタル、タングステン、コバルトを指定しています。これらの指定鉱物を含む全ての購入品が、RMIの認定する精製・精錬業者経由で製造されているかどうかを確認することが最終目標です。
調査対象の鉱物を含む航空エンジン部品などの製品群を洗い出し、これらの製品群を製造している取引先にRMIの指定するフォーマットに基づく調査票を展開することで、調査と深掘活動を継続して進めており、製品群の調査対象も随時広げていく予定です。経済開発協力機構(OECD)の5 step Frame Workのガイダンスを尊重しながら、調達企画本部の指示の下、発注担当部門が深掘活動を行っています。
また、取引先に、「IHIグループ取引先行動指針」10.3項「鉱物資源の責任ある調達」にて方針を周知しています。
指標と目標
調達関連教育の受講者数
これら3講座は「調達プロフェッショナル育成研修」内の講座で、各受講者数は内数です。
2024年度までの「下請法講座」は、法令の名称変更に伴い2025年度から「取適法講座」としています。
2025年度は法令改正に伴い、調達プロフェッショナル育成研修の対象に加えて、特別講座として実施しました。
2022年度より安全保障貿易管理に関する講座を追加しました。