サプライチェーンの強靭化
IHIグループは、近年発生している自然災害、感染症、紛争、CSR調達視点のリスクなどによって、生産を含めた事業活動が停滞することのないよう、サプライチェーンを強靭化する活動をグローバルに推進しています。
主要な原材料・部品の市況動向については日頃から情報収集して安定調達に努めるとともに、調達先の品質・納期などの管理を徹底し、特定の調達先への過度の集中・依存を避けるために調達先の分散化などを進めています。
各種リスクに影響を受けにくいサプライチェーン構築を進めるため、特に事業継続に不可欠な重要サプライヤーを抽出した上で、さまざまな評価ツールを活用しサプライチェーン強靭化の対象となる取引先を選定しています。
評価ツールには、第三者機関によるESGリスク評価、取引先の経営リスク評価、情報セキュリティや災害時の事業継続計画に関する聞き取りを含みます。
重要取引先の選定
IHIグループは、以下の観点から事業上重要なお取引先を特定し、重点的なリスク管理を行っています。
発注部材や工程の重要性
年間発注額の多寡
代替困難性
長納期性 など
2024年度は、一次取引先から514社を重要取引先として特定しました。IHIグループが取引を行う約9,000社の一次取引先のうち、一次重要取引先514社の調達金額の割合は24%となりました。
重要取引先数・比率
(対象:IHIおよび国内関係会社26社)
2024年度発注分
お取引先のサステナビリティ評価
サステナビリティ評価サービス「EcoVadis」の活用
IHIグループは、サプライチェーンに関する第三者評価プラットフォームであるEcoVadis社と2024年6月に契約を締結し、サプライチェーンリスクを適切かつ公正に評価するための体制を整えました。
お取引先にはEcoVadis社の実施するサステナビリティ評価を受けることを促し、評価上問題がない場合は優良サプライヤーとして管理し、懸案があれば、特別に聞き取り調査をするなど、リスク管理体制を構築していきます。コンプライアンス違反などの公開されたニュースは即座にピックアップされ、渦中の取引先に対して迅速な対応が可能となります。
またサプライチェーンにおけるリスクモニタリングとして、432社のお取引先より「EcoVadis」の評価結果の共有をいただいており、うち総合スコア45点以上のお取引先が80%を占めています。
セルフチェックシートによるサプライヤー管理
IHIグループでは、責任ある企業行動ガイドライン(JEITA)およびRBA(Responsible Business Alliance)行動規範を参考に「IHIグループ取引先行動指針」を策定し、お取引先に対し展開しています。また、この指針に基づく「セルフチェックシート」について一部のお取引先に回答をお願いし、課題の認識とさらなるCSR活動への取り組みを求めています。
これまでに、訪問対話の事前ヒアリングおよび一部工事における重要取引先の事前審査の一環として、「セルフチェックシート」を372通回収しました。うち163通は重要取引先からの回収です。
CSR活動推進のプロセス
お取引先とのエンゲージメント強化
「IHIグループ取引先行動指針」の周知・浸透
IHIグループは、「IHIグループ取引先行動指針」をウェブサイトで公開するだけでなく、通達文や説明会などを通じて既存のお取引先に周知しました。新規契約に関しては、本指針を尊重することが明記された基本契約書を適用します。
また、お取引先におけるCSR活動の支援として、人権や公正取引・倫理に関する合同セミナーを日本およびアジア2拠点で開催しました。2024年度の開催実績は下表のとおりです。
合同セミナーの参加者数
IHI側ならびに講演者を含む
「EcoVadis」を活用した対話
IHIグループでは、2024年度からEcoVadis社のサステナビリティ評価を参考に、お取引先を訪問し対話による課題のヒアリングを行っています。この対話では、お取引先の日頃のCSR調達への取り組み状況をうかがい、さらなる改善に向けたご協力について前向きに話し合うことを主旨としています。
2024年度は、国内の一次重要取引先から、所在国、業態によるリスク推定値を用いたスクリーニング、CSRの取り組み実態を踏まえ10社を選定し、セルフチェックシートなどによる事前ヒアリングを行った後に、お取引先を訪問し対話を実施しました。
対話においては、主にハラスメント防止、社内通報制度などの整備、カーボンニュートラルなどについてIHIグループの考え方を説明するとともに、お取引先における取り組みについて意見交換を行いました。
人権リスク低減活動
外国人技能実習生に対しての積極的な対話
IHIグループは、2023年より「リスク低減活動」として、一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)の協力の下、IHIおよびIHI国内グループ各社の構内協力会社が雇用する外国人技能実習生に対して積極的対話(直接のインタビュー)を実施しています。職場環境や労働条件における苦情を把握して、苦情の芽を早期に摘み取り是正していくことが目的です。
2023年11月~2024年10月にかけて、国内延べ8拠点で合計54名の外国人非正規労働者と積極的対話(直接のインタビュー)を実施しました。
反社会的勢力と贈収賄防止への対応
IHIグループは、お取引先との契約条項に反社会的勢力と一切関係を持たないこと、刑法・不正競争防止法で禁止されている外国公務員への贈賄行為、そのほか、各国の法令で禁止されている贈収賄などの行為は行わないことを定めています。これらの行為があった場合は、報告と調査への協力をお取引先に求めています。
従業員への教育・浸透
IHIグループは、調達関連法規および業務規程に関する教育に注力し、併せて遵守を業務の中で点検し改善するなど、コンプライアンス強化を図っています。
IHIグループ調達人財の育成を目的とした調達プロフェッショナル育成研修では、従来の対面型研修に加えてオンデマンドの動画配信も取り入れ、受講者の利便性を向上させることによる学習・学び直し機会の拡大により法規・規程の理解の浸透を図っています。
また、調達関連部門だけでなく広くIHIおよび国内関係会社36社の従業員向けにも、CSR調達の内容を含むe-ラーニングによる一斉教育により法規・規程および社会的要請の理解や対応などの教育と浸透を図っています。2024年度は、対象従業員のうち85%がe-ラーニングを受講しました。
2024年度は、調達費用の上昇に対応するための価格査定力向上を目的とした教育、また持続可能なサプライチェーンを構築するためにグループ中堅社員を対象としたサプライチェーン・マネジメント教育も開催し、これからの調達業務に求められるスキルの向上を図ることで従業員のエンゲージメントおよび満足度向上にも努めています。
紛争鉱物を含む「鉱物資源の責任ある調達」
IHIグループは、紛争鉱物に関する取り組みを主導する団体Responsible Minerals Initiative(RMI)の趣旨に賛同しています。IHIグループは、当面の調査対象鉱物として、RMIの認定業者の多いスズ、タンタル、タングステン、コバルトを指定しています。これらの指定鉱物を含む全ての購入品が、RMIの認定する精製・精錬業者経由で製造されているかどうかを確認することが最終目標です。
調査対象の鉱物を含むジェットエンジン部品などの製品群を洗い出し、これらの製品群を製造しているお取引先にRMIの指定するフォーマットに基づく調査票を展開することで、調査と深掘活動を継続して進めており、製品群の調査対象も随時広げていく予定です。経済開発協力機構(OECD)の5 step Frame Workのガイダンスを尊重しながら、調達企画本部の指示の下、発注担当部門が深掘活動を行っています。
また、お取引先に、「IHIグループ取引先行動指針」10.3項「鉱物資源の責任ある調達」にて方針を周知しています。