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第52巻 第4号(平成24年11月発行)
エネルギー特集号

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1.巻頭言

巻頭言

エネルギー特集号の発刊にあたって

  • 取締役 執行役員 エネルギーセクター長
  • 浜村宏光

2.我が社の看板娘

我が社の看板娘1

海底油田を制覇するFSO 世界中の海底油田を活かす,海に浮かぶ巨大原油基地IHI製の浮体式石油貯蔵積出設備 「ERAWAN2」

  • 株式会社IHI

新興国の工業化などにより原油需要が伸び,原油価格が高騰している.そのため,これまでは経済的に採算が取れなかった遠洋や大水深の海洋油田・ガス田の開発が進んでいる.世界的にも関心の高まっている海洋油田・ガス田で活躍するのが,「海洋構造物」と呼ばれる海のエネルギープラントである.

我が社の看板娘2

4つのステージに連続制御を加えた新型ボイラ シンプルな発想を豊富な運転実績が具現化させたIHI小型貫流ボイラのフラッグシップモ デルK-3000SE

  • 株式会社IHI汎用ボイラ

その手軽さから,設置台数が急増している小型貫流ボイラ.株式会社IHI汎用ボイラは,ボイラの構造・制御法に工夫を凝らし,運転の効率化と環境負荷の低減を図ってきた.従来の4ステージ(位置)燃焼制御の中間部を比例制御方式に変えた新たな燃焼制御技術を開発し,2012年10月リリースした.

3.我が社のいち押し技術

我が社のいち押し技術1

「濡れる」プラスチックを作る プラスチックに多彩な機能をもたせるプラズマ制御技術

  • 株式会社IHI

軽くて強く,自由な形の製品を作れるプラスチックは,さまざまなシーンで活用されている.このプラスチックは水をはじくことが知られている.しかし,その表面に加工を施すと水がなじむようになる.このなじんだ状態は「濡れる」と呼ばれる.IHIのプラズマ制御技術が濡れるプラスチックを作った.

我が社のいち押し技術2

次世代のLSIを実現する光 IHIのプラズマ制御技術が生んだ高変換効率極端紫外光源

  • 株式会社IHI

コンピュータに利用されている集積回路発達の歴史は,「微細化」の歴史であるといえる.より高速で計算したり,より多くの情報を記録したりするためには,半導体の基板であるシリコンウェハ上に,いかにして多くの素子や回路を作り込むことができるか,が重要だからである.そして,そのためにはより波長が短く,大きなエネルギーをもった光源が必要である.

4.こんなビジネスが面白い

こんなビジネスが面白い1

電気自動車をもっと使いやすく 非接触給電システムの開発

  • 株式会社IHI

クリーンで環境にやさしい電気自動車が普及しつつある.しかし,電源ケーブルをつないで充電するのが面倒・・・そんな悩みを解決するのが非接触給電技術である.駐車場に車を止めている間に,自動的に充電するシステムを開発している.

こんなビジネスが面白い2

標準化と柔軟性で蓄電市場を切り拓く 電気自動車,電力安定化,機械電化,スマートグリッド・・・で活躍するIHIのリチウム イオン電池システム

  • 株式会社IHI

リチウムイオン電池は,エネルギー密度も出力密度も高い有望な充電式電池であるが,価格が高いことが普及の足かせとなっていた.IHIの「エネルギーマネジメントツール」という発想がこの壁を破った.

5.箸休め

箸休め

語り継がれる「タイタニック号」

  • 技術開発本部 基盤技術研究所 材料研究部
  • 飯田 雅

6.技術論文および解説

技術論文および解説 1

IHIの再生可能エネルギーへの取組み

  • 磯本 馨

地球温暖化の防止,次世代への化石燃料確保の観点から再生可能エネルギーの利用拡大が急務となっている.IHIはグローバルな展開を視野に入れつつ,日本国内のエネルギー自給率向上に貢献する海洋エネルギーとバイオマス(木質,藻類)を中心に取り組んでいる.さらに,太陽光や風力などの不安定性を補うリチウムイオン電池システムを提供することができる.これからもIHIは再生可能エネルギーをベースとした持続可能社会の実現という夢に向け果敢に挑戦して行く.

技術論文および解説 2

微粉炭火力の木質バイオマス高比率混焼技術の開発

  • 田村雅人,大野恵美,糸数龍之介,福島 仁,河西英一

木質バイオマスを粉砕して高比率で微粉炭と炉内混焼するための新開発の木質バイオマスミルと専焼バーナの試験結果について報告する.石炭用のミルをそのまま木質バイオマス粉砕に適用した場合は,粉砕容量が石炭の場合の1/10まで減少するが,ミル胴内流速の増大とエアポートの改造によって,石炭を超える粉砕容量を得ることができた.その結果,1.5~3.0%/minの変化率での安定した負荷変化も実現した.このミル改造内容は,容易に元の石炭用ミルに戻すことが可能なものであり,新設に加え,既設設備の改造にも対応可能である.一方,バーナは,木質バイオマスと石炭をそれぞれ専焼させるバーナとして,安定燃焼を得たので,報告する.

技術論文および解説3

アメリカにおける航空転用型ガスタービン市場の特性と日本での展開の期待

  • 高村 薫

2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)以後,日本におけるエ
ネルギーのあり方についてさまざまな議論が展開されている.エネルギーを無駄にしないという基本原則があるべきであり,最適なエネルギーミックスの見直しが急務である.アメリカでは,航空転用型ガスタービンの特長を最大限に活かした発電を行っており,市場が拡大している.本稿ではアメリカの航空転用型ガスタービン市場の特性を概観し,今後の日本における展開を期待した考察を行う.

技術論文および解説4

VOC400 kg/h処理に対応したVOC回収ガスタービンコージェネレーションシステム

  • 島村昌邦,平野 学,奈須野祐一,宇治茂一,高橋 克昌

塗装や印刷工程で排出される揮発性有機化合物(VOC)は光化学オキシダント発生の主要な原因物質であり,近年は排出量に対する法的な規制や厳しい削減目標が定められている.回収されたVOCの一部は再利用されるものもあるが,現在でも多くのVOCが化石燃料を用いて燃焼処理されている.VOCの燃焼処理は,塗装や印刷工程をもつ企業の費用負担となっているだけでなくCO2排出による環境への負荷ともなっている.当社では,これらの負担・負荷を解消するため,VOC回収ガスタービンコージェネレーションシステムを開発し,その性能向上に積極的に取り組んできた.VOC回収ガスタービンとは,これまで燃焼処理されていた
VOCをガスタービンの燃料の一部として利用することで,VOCの処理費用削減に加え,ガスタービンの主燃料(燃料ガス)の削減,その削減によるCO2排出量の削減に貢献するものである.本稿では,当該設備の性能向上の成果について紹介する.

技術論文および解説5

IHI小型貫流ボイラのフラッグシップモデルK-3000SEの開発

  • 河岡幸伸

その手軽さから,設置台数が急増している小型貫流ボイラ.株式会社IHI汎用ボイラは,ボイラの構造に工夫をこらし,運転効率の向上と環境負荷の低減を図ってきた.新たな燃焼制御技術と大容量化によって,省エネルギー化と設備コスト削減を達成し,販売を開始したIHI小型貫流ボイラのフラッグシップモデルK-3000SEについて紹介する.

技術論文および解説6

浮体式石油貯蔵積出設備(FSO)「ERAWAN2」

  • 高橋 徹,畳 英明

「ERAWAN2」は,貯油能力1080000barrelをもつFSO(Floating Storage and
Offloading system:浮体式石油貯蔵積出設備)である.契約から引き渡しまで14か月の短納期を経て,2012年4月末日にIHI愛知工場から引き渡された.ここでは,本船の概要を紹介する.

技術論文および解説7

レーザを用いた広域CO2漏えい検知技術の開発

  • 伊澤 淳,大海聡一郎,稲元智行,久保田伸彦

レーザ技術を用いてCO2の漏えい検知を遠隔で広範囲(数km)に行う装置の開発を進めている.今回,試作した小型可搬型の計測装置によって大気中および燃焼排気ガス中のCO2検出試験を行った.当社独自開発の装置によって,横浜事業所内屋外の距離約130mまでの大気中のCO2,および燃焼プラントの燃焼排気ガス中のCO2検出に成功した.本稿では,レーザによるCO2漏えい検知技術の概要,当社の技術の特長および装置特性,本装置を用いたCO2検出試験結果について述べる.

技術論文および解説8

高変換効率極端紫外光源の研究開発

  • 桑原 一

高効率かつ派生物の少ない極端紫外光源として,二つの同軸プラズマガンを対向配置した対向プラズマフォーカス光源を提案した.放電回路を分割独立化したマルチ放電と短パルスレーザを用いた初期プラズマ生成によって,対向したプラズマ源の中間部で安定にプラズマを収束させることに成功した.収束した高温高密度プラズマからは,極端紫外領域の光を1ショット当たり1μs以上の長時間にわたり発生させることが可能であり,リチウムをプラズマ媒体として用いることによって,リソグラフィに有効な波長域で200mJ/ショットの光を得ることができた.

技術論文および解説9

プラズマによるプラスチックの表面改質

  • 義久久美子,吉村昭彦,柴森康裕,渕上健児,久保田伸彦

疎水性であるプラスチックは,表面を親水化処理し印刷性や接着性を付与されている.しかし従来の方法では,プラスチック表面の親水性が時間経過とともに失われるという問題があるため,親水性劣化防止が望まれている.
本稿では,当社が保有するマイクロ波プラズマ技術を活用したプラスチックの表面改質を検討し,アルゴンプラズマおよびアルゴン/酸素混合ガスプラズマから成る2 段階処理を考案,長期に親水性の保持が可能な表面処理プロセス技術を確立した結果について述べる.