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井手博
代表取締役社長
最高経営責任者
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世界中の人々の安心・安全、
豊かな暮らしを根幹から支える アンカー - 2040年に向けた成⻑戦略 アンカー
- 持続的な成長の原動力となる技術・人財 アンカー
- 持続的な成長の前提となるコンプライアンス アンカー
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世界中の人々の安心・安全、
豊かな暮らしを根幹から支えるIHIグループは、2040年に向けて、日本の産業力・国力を再び世界トップレベルに高めるための一翼を担い、世界各国の経済・国家・エネルギーの安全保障に貢献することを目指しています。
そのためのありたい姿として、「世界中の人々の安心・安全、豊かな暮らしを根幹から支える For Industry & National Security」を掲げました。これがIHIグループの経営における中長期の方向性です。
2025年度(2026年3月期)決算説明会「中長期の方向性」p.4の図を簡略化して掲載 この方向性を定めた背景には、世界情勢の大きな変化があります。私が社長に就任した2020年はコロナ禍の最中であり、社会の基盤そのものが揺らぐ状況でした。その後も、ウクライナや中東情勢をはじめとする地政学リスク、エネルギー問題、情報セキュリティ上の脅威など、複数の課題が同時進行し、安全や安定が前提とされてきた環境そのものが変化しています。
こうした環境の変化を受け、IHIグループの果たすべき役割を改めて問い直しました。創業以来、技術を起点に産業・国家レベルの重要な課題に挑み、各国・地域の社会基盤を支えてきた歴史も踏まえ、経営陣で議論を重ねた結果、IHIグループが担うべき役割は、産業の基盤を支え、各国・地域の社会や経済が持続的に機能する状態を維持することにあるとの認識に至りました。
この考えは多くの従業員の「社会課題の解決に貢献したい」「国や地域のために働きたい」という思いと重なっています。
ありたい姿に「For Industry & National Security」を含めた理由は、IHIグループが強みを発揮し、持続的に社会に貢献できる事業分野を明確にするためです。「For Industry」には、産業の基盤そのものを強化することが、社会や国家の安定につながるという考えを込めています。
また、「National Security」は、防衛だけでなく、エネルギーの安定供給、強靭なインフラ、安全で持続的な経済活動といった、国家や社会を土台から支える広い意味での安全保障です。世界情勢がこれほど不安定になる中、社会の基盤を支える企業として、あえてこの言葉を用い、IHIグループとしての覚悟を示しました。
振り返ると、2020年の社長就任時には、ポートフォリオ改革や構造改革、財務基盤の強化が急務で、これらの問題を解決しなければ、中長期の経営戦略を実行することができない状況でした。そのため、事業の見直しや財務体質の改善を進め、中長期の戦略を実行できる体制を整えてきました。その結果として、ようやく2040年という中長期的な将来を見据えたスタートラインに立つことができたと考えています。
産業基盤や安全保障に関わるビジネスは、技術を起点に開発から社会実装、運用に至るまで長い時間を要する分野です。そこで蓄積された実績や経験こそが競争力の源泉になります。その競争力を示すためにも、今回、10年、15年先の方向性を示すこととしました。
今回の方針では、2034年度までを3つの段階に分けたロードマップを策定しました。「フェーズ1:先行投資・財務基盤強化」、「フェーズ2:営業利益・営業キャッシュ・フロー拡大」、「フェーズ3:フリー・キャッシュ・フロー拡大」です。最終段階の「フェーズ3」では、売上収益CAGR5%超、営業利益率15%超、ROIC13%超の水準を目指します。
まず「フェーズ1」である今後3年間は、「フェーズ2」以降の成長を確実なものとするための基盤構築期間と位置付けています。成長事業である民間エンジン、防衛、原子力事業の需要増加に対応するため、この期間においては、これらの事業の供給能力拡大に向けた投資を重点的に進めます。同時に、こうした成長投資を支えるため、不動産売却などを通じて財務基盤の一層の強化を図ります。これらの成長事業を着実に伸ばすとともに、エネルギー関連の運用・保守事業における収益拡大にも取り組むことで、「フェーズ1」の3年間では、営業利益率10%~13%を目指します。
続く「フェーズ2」では、「フェーズ1」で進めた投資の効果が表れ始め、供給能力の拡大に伴う受注増加や収益性改善により、営業利益率は13%を超える水準まで高めていきます。これにより、営業キャッシュ・フローも大きく拡大する見通しです。
さらに「フェーズ3」においては、先行投資の成果が本格的に回収される段階に入り、安定的な利益成長を実現します。営業利益率15%以上を達成するとともに、キャッシュ創出力を一段と高め、3年間で累計営業キャッシュ‧フロー1兆円超を目指します。中長期の方向性に関して投資家の皆さまと対話をした際には、IHIグループの事業特性上、短期ではなく中長期で評価すべきとの認識と、10年単位でロードマップを示したことに対して、概ね前向きな評価をいただきました。今後は各事業の具体的な成長戦略に関して、投資家をはじめとするステークホルダーの皆さまと対話を重ねていきます。 -
2040年に向けた成⻑戦略
IHIグループは、2040年に向けて成長していく事業分野を、「エアロスペース」「エネルギー」「インフラ」の3つの事業ドメインとして定義しました。ここでいう事業ドメインとは、現在の事業や組織の分類ではなく、今後IHIグループが貢献するフィールドのことです。2040年を見据えて、既存事業の枠にとらわれず、事業ドメインの中で新しいビジネスを生み出していきます。
IHIグループはこれまで、製品やプロジェクトごとに競争し、受注時に価格で比較される場面もありました。今後はこのような単発の価格競争に依存する構造から脱却し、長期間にわたり収益を確保できる事業構造へと転換していきます。
そのためにIHIグループが事業機会を見いだすのは、産業基盤や国家・社会の安全保障に関わるビジネスです。こうしたビジネスでは、高い技術、安全性、品質が求められるだけでなく、長年の実績や認証・規制への対応も必要となります。IHIグループは、長年にわたり、圧倒的に強い技術を起点に、こうした範囲で事業を展開してきました。技術を高めることで、他社では対応が難しい課題を解決できるようになり、それがお客さまから選ばれる理由になります。また、そうした案件を通じて蓄積された実績や経験は、お客さまからの信頼につながり、さらに高度な案件への挑戦を可能にします。こうした技術、実績、信頼の積み重ねが、IHIグループの競争力の源泉となっています。
さらにIHIグループは、製品を提供して終わるのではなく、その後の運用・保守、更新にも長期にわたって関わってきました。それにより、お客さまは重要な設備や機能を長期間にわたり安定して利用することができ、社会にとっても産業活動や人びとの暮らしを支える基盤の維持・強化につながっています。また、そうした長年の運用経験を通じて得られる知見は、設備やサービスのさらなる改善にも活用され、IHIグループの競争力を一層高めています。今後は、こうした強みをさらに高めながら事業競争力を強化していきます。
その上で、培った技術・知見をグローバル市場へ展開するとともに、防衛分野で培った技術・製品を民間分野にも活用(=デュアルユース※)することで、事業機会を拡大していきます。新たな市場で得た経験を次の技術開発につなげ、その技術がさらに新たな事業機会を生む、この循環を大きくしていくことで、持続的な成長を実現します。
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民間と防衛の両分野で利用可能な技術・製品を指す
強い技術を持った分野では、新たな市場の創出にも取り組みます。製品や技術の提供にとどまらず、運用・保守、更新、関連サービスまで組み合わせて提供することで、これまで成立していなかった市場を形成し、その立ち上げ段階から関与することで、事業の主導権を確保していきます。
このように、IHIグループは、技術を起点に獲得した事業機会を、長年にわたる実績と信頼によって競争力へと高め、その強みを世界へ広げながら、新たな市場の創出にも挑戦することで、産業基盤と安全保障を支え続けていきます。
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持続的な成長の原動力となる技術・人財
IHIグループの価値づくりを加速させるため、今後の事業の方向性に沿って技術と人財の在り方を再定義し、強化していきます。
これまで述べてきた価値創造の仕組みは、技術と人財が揃って初めて機能します。技術は参入できる事業分野を定めるだけでなく、新たな市場を生み出す起点となります。また、人財はその技術をどのように事業化するかを構想し、実行する役割を担います。技術と人財の双方があってこそ、価値創造プロセスが動き出し、事業の成長を実現します。
そのため、IHIグループは技術と人財を経営の原動力と位置付けています。
技術面では、競争力の源泉となる技術分野を見極め、経営資源を重点的に投入しています。また、需要拡大に対応するため、ロボティクスやAIの活用も含めてものづくりの実行力を高めていきます。人財面では、多様な経験を持つ人財の獲得と、一人一人が能力を最大限に発揮できる環境づくりを進めています。事業機会を捉えていくためには、お客さまから示された課題に応えるだけでなく、社会や産業構造の変化を先読みし、お客さま自身もまだ十分認識していない将来の課題やニーズを捉え、製品やサービスとして具体化する力が求められます。その力を身に付け、発揮するためには、多様な人財との協働が不可欠です。
異なる経験や価値観を持つ人財が集まると、組織内で摩擦も生まれます。しかし、私はその摩擦を決して悪いものだとは考えていません。むしろ、摩擦を避けて全員が同じ考えに染まってしまうことの方が危険です。多様な価値観がぶつかり合い、それでも互いに敬意を持ちながら議論を続けて新しい価値を生み出すことが、不可欠だと考えています。さらに今後は、人と人に加え、AIなども含む多様なワークフォースとも協働を進め、多様性を競争力へとつなげていきます。
こうした取り組みを支える土台となるのが、「新たな価値につながる挑戦と応援が連鎖する組織文化」です。重要なのは、結果だけでなく挑戦そのものを評価し、互いの挑戦を応援できる環境をつくることです。挑戦と応援が連鎖することで、組織全体の変革を加速させていきます。
ただし、挑戦には不確実性も伴います。経営層は現場のリスク情報を把握し、リスクマネジメントに関する意思決定に責任を持つことで挑戦を後押しします。また、管理職層には、単に権限を委ねるのではなく、実現に向けてスタッフ層と共に考え、支援する役割を期待しています。経営・管理職・スタッフなどそれぞれの層が役割を果たすことで、挑戦とリスクマネジメントの両立を実現していきます。このように新しい価値を生み出す挑戦を組織全体で支えることが、持続的な成長の基盤となると考えます。 -
持続的な成長の前提となるコンプライアンス
これまで述べてきた価値創造の取り組みは、健全なガバナンスがあって初めて成立するものです。持続的な成長の前提として、コンプライアンスの徹底は不可欠です。
2024年度に子会社において不適切な事案が発覚したことを踏まえて、従前よりもさらに踏み込んで、品質およびコンプライアンスの徹底に取り組んできました。具体的には、リスクを管理するにあたり、事業部門とコーポレート部門の役割を明確化するとともに、常に新たな視点で業務を確認できる体制を整備するため、人財ローテーションの活性化を進めてきました。
また、「声の上がる職場づくり」に向けて、対話活動や教育を強化し、私自身もコンプライアンスの重要性や組織風土の改善について発信してきました。しかしながら、2026年6月に、当社の子会社である株式会社IHIエアロスペースが、お客さまである国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)より、競争参加資格の停止処分を受け、これを公表しました。コンプライアンスを最優先に取り組んできた中で、このような事態を招いたことを重く受け止めています。ステークホルダーの皆さまにご心配とご迷惑をおかけしたことを深くお詫びいたします。
過去の事案も含めて、各職場が日々の業務に追われ、実際には声を上げにくい状況にあったこと、その背景に、負担を強いるような実情に合わない不合理な慣例が残っていたことに、大きな反省と課題があると認識しています。
こうした状況を踏まえ、私をトップとしたリスクモニタリングボードを設置しました。
リスクモニタリングボードは、品質やコンプライアンスに限らず、あらゆるリスクに関する情報を経営層が把握できる環境を構築することと、職場の実態把握を目的としたヒアリング等を通じて職場に潜む不合理を抽出し、そこで明らかになった不合理を、職場任せにせず経営として解決することなどを目的としています。リスク情報把握と経営主導の不合理解消により、放置すれば品質問題やコンプライアンス違反につながりかねない問題の芽を早期に把握し、リスク低減する仕組みを構築します。併せて、健全に声が上がる職場の実現に取り組んでいきます。
IHIグループは、技術を起点に社会の基盤を支え、産業や社会の持続的な発展に貢献していきます。環境が不確実性を増す中においても、社会にとって不可欠な機能を担い続ける企業として、その役割を果たしていきます。
その実現に向けては、これまでに示してきた方針と取り組みを着実に実行し、経営層から従業員までが一体となって挑戦を積み重ねながら、成長を確かなものとしていきます。
ステークホルダーの皆さまとの信頼関係を基盤に、長期にわたり価値を提供し続けることで、持続的な企業価値の向上を実現していきます。
IHIグループは、2040年に向けたありたい姿「世界中の⼈々の安⼼‧安全、豊かな暮らしを根幹から支える For Industry & National Security」を掲げ、その実現に向けた中長期の方向性を示しています。産業基盤と安全保障を支える企業として、「エアロスペース」「エネルギー」「インフラ」の3つの事業ドメインを成長のフィールドとして定め、長年培ってきた技術、実績、お客さまとの信頼を競争力の源泉として新たな価値創造と持続的な成長を追求します。そのための重要な戦略として、ライフサイクル全体で価値を提供し、新たな市場や事業機会の創出に取り組みます。また、技術と人財を価値創造の原動力と位置付け、「新たな価値につながる挑戦と応援が連鎖する組織文化」を育み、組織全体の変革を加速させていきます。同時に持続的な成長を支える基盤を構築するために、コンプライアンスの徹底に取り組んでいます。そのために、リスクモニタリングボードを設置するなど、リスクマネジメントのさらなる強化に努めています。今後も、ステークホルダーとの信頼関係を基盤に、持続的な企業価値の向上を実現します。
