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⼤嶋裕美
常務執行役員
グループ財務担当
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長期成長を支える財務基盤の構築
中長期の方向性として、2040年に向けたロードマップを策定しています。これまで3年単位で中期経営方針を示していましたが、IHIグループの事業は、成果が出るまで10年から15年またはそれ以上を要するものが多く、3年単位の経営方針では長期の成長ストーリーや投資回収の時間軸を十分に伝えきれない課題がありました。これらを明確に示すため、ロードマップを策定し、2026~2028年度を先行投資・財務基盤強化の「フェーズ1」、2029~2031年度を営業利益と営業キャッシュ・フロー拡大の「フェーズ2」、2032~2034年度をフリー・キャッシュ・フロー拡大の「フェーズ3」と位置付けています。
※成長事業:民間エンジン・防衛・原子力
育成事業:宇宙・アンモニア
安定収益事業:カーボンソリューション・原動機、
パーキング、橋梁・水門など「グループ経営方針2023」の期間(2023~2025年度)には、事業譲渡を含む事業ポートフォリオの見直しや事業収益の向上につながる構造改革を進めてきました。その結果、収益性は着実に改善するとともに、資本効率の改善や、営業キャッシュ・フローの創出力も大きく向上しています。こうした着実な改革を経て、ようやく中長期的に飛躍的な成長を目指せる準備が整いました。
IHIグループが成長事業と区分する民間エンジン、防衛、原子力事業などは、いずれもグローバルで高い成長性が期待されています。この旺盛な需要を確実に取り込むためには、研究開発投資や設備投資、人財投資を含めた継続的な積極投資が不可欠ですが、こうした投資を安定的に実行していくためにも、強固な財務基盤が必要です。
現在は、収益改善により自己資本が着実に積み上がっていますが、自己資本比率や負債残高の面では、まだ十分な水準には至っていません。中長期的にはD/Eレシオ0.5倍以下、自己資本比率35%以上を1つの目安として設定しています。これは外部環境の不確実性を吸収し積極的な成長戦略を実行するために必要な水準と考えています。グループ財務担当役員として、「強固なバランスシート」をつくることが最も重要な役割と捉えています。
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規律ある資本配分の下、成長分野に積極投資
「フェーズ1」では、成長投資を中心に6,500億円の投資を行う予定です。各事業を役割に応じて「成長事業」「育成事業」「安定収益事業」に分類しています。成長事業ではトップラインの拡大を重視し、育成事業では新たな収益の柱の構築を目指しています。一方、安定収益事業では、資産効率の高いライフサイクルビジネス(LCB)を通じた利益とキャッシュ創出の拡大を目指しています。
成長事業に分類される民間エンジン、防衛、原子力といった事業は、いずれも市場そのものが成長しています。この機会を逃さないためには、投資を積極的に実行する必要があります。
それぞれの事業ごとの投資判断については、創出するキャッシュ・フローとROICを重視しています。ただし、ROICを単年度の“点”で見るのではなく長期的なリターンとのバランスを考えています。投資直後はROICが低下することもありますし、アンモニアバリューチェーンや宇宙インフラのように、長期的な視点で育てていく必要のある事業もあります。だからこそ、事業特性に応じて、短期・中期・長期に時間軸を分けながら、「十分なキャッシュを生み出し、資本コストを超えるリターンを創出できるか」を重視しています。また、ROICの改善だけでなく、資本市場との対話などを通じて資本コストを引き下げることで、ROIC-WACCスプレッドを拡大させ、企業価値向上につなげていきます。
グループ財務担当役員としてリスクの取り方についても留意しています。リスクは、「取るべきリスク」「取れるリスク」「取ってはいけないリスク」の3つに分類できると考えます。事業成長のために取るべきリスクについては、全力で後押しをします。一方で、企業の存続を揺るがすことにつながるであろうリスクについては、どれほど魅力的な投資機会に見えても、止める責任があります。優れた技術や大きな構想であっても、収益やキャッシュを生まなければ持続的な企業価値向上にはつながりません。財務担当役員として、限られた経営資源を、財務規律を保ちながら、最も高い価値創出につながると期待できる事業分野へ配分していきます。
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持続的な成長を支える両輪:事業戦略と財務戦略
成長戦略を絵に描いた餅に終わらせずに、実行し続けていくためには、事業戦略を裏付ける財務戦略が必要です。つまり、事業戦略と財務戦略を一体で推進することが、持続的な成長の実現の上で重要です。
こうした考えに基づき、2025年4月に、全社成長戦略を統括するFP&A(Financial Planning & Analysis)を立ち上げました。財務部メンバーと、事業部門からローテーションで来ているメンバーから構成される混成チームです。事業部門と密接に連携しながら、事業戦略と財務戦略の双方をつなげ、戦略の進捗をモニタリングする役割を果たしています。
FP&Aを中心としたコーポレートと事業部門が一体となり、月次で業績モニタリングや今後の見通しを協議することで、成長戦略を加速させるだけではなく、問題の兆候を早期に捉え、必要な対策を迅速に講じることができるようになりました。
業績を確認しながら、期初に立案した見通し達成の蓋然性は変わっていないのか、未達の場合は、何が原因で、どのような施策でいつまでに挽回するのかなど徹底的に議論します。毎月のこうしたプロセスは決して楽なものではありませんが、全社が一丸となって経営目標を達成するためには、極めて重要なプロセスだと考えますし、双方の立場から徹底的に議論することで、より高みを目指していくことができると考えています。
このように、FP&Aの観点で数字面から戦略実行を支えることを通じて、企業価値向上に貢献できる存在になりたいと考えています。 -
資本市場との対話による企業価値向上
ありたい姿の実現に向けて、企業価値を高めていくためには、資本市場の皆さまからのIHIグループへのご理解とご支援が必要不可欠です。
資本市場との対話は、従来、社長と財務担当役員だけで行ってきましたが、現在では、副社長や常務、事業責任者へ参加者を広げ、経営陣全体で資本市場と向き合う体制へ転換しました。その結果、IHIグループの長期的な成長戦略をご理解いただける長期志向の株主さまが増えています。
こうした資本市場との積極的な対話を通じて、IHIグループへの信頼を高めていただけることは、結果として資本コストの低減につながり、ROIC-WACCスプレッドの拡大につながっていくと考えています。業績の良いときも悪いときも、しっかりと資本市場と向き合う会社でありたいと考えています。
株主還元については、「フェーズ1」では、まず成長投資を優先しながら、1株当たり配当金の持続的な成長を目指します。そして「フェーズ2」、「フェーズ3」へ進み、フリー・キャッシュ・フローが拡大していく中で、自己株式取得を含めた株主還元の強化を検討していきます。将来の株主還元を拡大するためにも、足元では着実な成長投資を実行し、利益拡大を図ることで、1株当たりの利益を高め、株主価値向上につなげていきます。
私の役割は、規律ある成長投資と、成長戦略を中長期的に支える強いバランスシートをつくることの両立です。全ての経営判断は、最終的にはキャッシュ・フローとバランスシートに帰結します。中長期にわたる成長を実現し、さらなる企業価値向上・株主還元拡充を達成するためにも、ダウンサイドリスクを遮断するとともに、財務面から事業成長を牽引していきたいと考えています。
IHIグループは、2040年のありたい姿の実現に向け、成長投資と強固な財務基盤の構築の両立を進めています。中長期ロードマップでは、2026~2028年度を先行投資・財務基盤強化の期間と位置付け、民間エンジン、防衛、原子力などの成長事業を中心に、積極的に投資します。投資判断ではキャッシュ・フロー創出力とROICを重視します。また、事業戦略と財務戦略を一体で推進し持続的成長を実現します。資本市場との対話を通じてIHIグループへの信頼を高め、成長投資、利益拡大、株主還元の好循環による持続的な企業価値向上を目指します。
