事業戦略
IHIグループを取り巻く事業機会は、社会や産業の変化によって、大きく広がっています。
具体的には、以下の7つの分野での成長機会を見込んでいます。
広がる事業機会

IHIグループが取り組む事業
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民間エンジン事業

航空旅客需要の拡大に伴い、航空機および航空エンジン市場は中長期的な成長が見込まれています。IHIグループは、民間エンジンの国際共同開発とライフサイクルビジネスを通じて、この成長機会を取り込んでいきます。
市場環境
世界の民間航空市場は、航空需要の拡大を背景に、中長期的に安定した成長が見込まれています。2025年時点で約2万6千機の航空機が運用されており、2045年までに約4万機まで増加すると予測されています。航空機は一度導入されると20~30年以上にわたり運用されるため、航空機とともに使用されるエンジン市場も、長期的な視点での成長産業と位置付けられています。
ジェット旅客機の需要予測結果
一般財団法人日本航空機開発協会「民間航空機に関する市場予測2026-2045」を基にIHIにて作成 民間エンジン事業は、製品開発に巨額の投資と高度な技術を要します。そのため、エンジン開発を主導するOEM(完成品メーカー)が中核となって、リスクと役割を分担するパートナー企業を募って開発・供給を行う国際協業が一般的です。エンジンの性能や信頼性を左右する主要モジュールは、所要の生産・技術基盤を有する、世界的にもごく限られたパートナー企業が担当しています。
民間エンジンビジネスの産業構造
© IHI Corporation All Rights Reserved. さらに航空エンジンは、運航開始後、定期的な整備、修理、オーバーホール(MRO: Maintenance, Repair and Overhaul)が必要となります。これらMROやスペアパーツ供給を中心とする航空機のアフターマーケット市場は、運航機数や運航時間の増加と連動して安定的な需要が見込まれ、安全性・信頼性等を担保できる、認証を受けた事業者のみが参入することができます。
このように、開発から製造、アフターマーケットまで、ライフサイクル全体にわたって高い付加価値を提供するとともに事業性を確保する産業構造となっています。事業戦略
IHIグループの航空エンジン事業は国内防衛向けから始まり、欧米で開発されたエンジンのライセンス生産や独自国産エンジンの開発を通じて事業基盤を培い、民間エンジン事業に進出しました。その後、さまざまな民間エンジンの国際共同開発に参画しながら事業基盤を発展させてきました。民間エンジン事業において競争優位性を維持し続けている理由は、単一の先端技術や特定製品に強みを持つことだけではありません。技術、人財、事業運営力といった複数の経営資源を、長期にわたり総合的に蓄積・進化させてきたことが持続的な競争優位性の獲得につながっています。
民間エンジン事業 競争優位性の強化プロセス
航空エンジンは、強力な推進力を発揮するために高温・高圧・高回転の極限環境下で作動させる必要があり、空気力学、燃焼、材料、構造、冷却、制御といったさまざまな技術をシステムとして高度に統合します。IHIグループは、エンジン性能、耐久性、信頼性を大きく左右する主要モジュールを担うパートナー企業としてさまざまな国際共同開発事業に参画し、設計・製造などを担ってきました。エンジンシステムの全体や運用環境を深く理解した上で価値を提供できる点が、エンジンOEMから、単なる部品供給にとどまらず、パートナーとして選ばれる理由となっています。
さらに、航空エンジンの安全性や信頼性を担保するためには、安定した品質で製造できることが必要不可欠です。IHIグループは、鍛造、鋳造、複合材成型といった素形材技術や、切削、接合、表面処理といった加工技術に加え、工程設計、非破壊検査、品質管理といったプロセスを統合し保証するための技術など、製造に関わるさまざまな技術の集合を、ものづくり基盤と位置付け、中核的な競争力の一つとして構築してきました。これにより、技術的に高度なエンジンの主要構造部材や回転体、耐熱部品についても、供給責任を果たすことを前提とした事業展開が可能となっています。高度な技術- “推力”に関する技術(空気力学、燃焼、材料、構造、冷却、制御)
- 素形材技術(鍛造、鋳造、複合材成型)
- 加工技術(切削、接合、表面処理)
また、燃費改善や環境負荷低減への要求が一段と高まる中、軽量化や耐熱技術は次世代のエンジンにおける重要な競争領域です。IHIグループは、複合材料や次世代耐熱材料などを含む領域においても、材料、構造、製造、品質保証を総体として開発できる技術基盤を有し、エンジン全体の高性能化に寄与しています。特に、IHIグループは、複合材料や次世代耐熱材料に関する技術について中長期的な視点を持ち、過去20年以上にわたり継続的かつ戦略的に特許出願を行っています。特に材料特性、構造設計、製造プロセス、品質保証に関しては、これらをカバーする特許ポートフォリオを形成しており、上記技術基盤の保護の強化を図っています。
こうした技術力を長期にわたって支えてきたのが、人財と組織の力です。民間エンジン事業では、運用開始後も数十年にわたり供給、整備対応を継続的に担うことが求められます。IHIグループは、設計、製造、MRO、調達、品質・スケジュール管理など、エンジンプログラム全体を理解し、認証やOEMとの技術の協議を担える専門人財を育成してきました。これらの知見が組織内で循環することで、世代を超えて競争力を維持する基盤が形成されています。機会の最大化- ライフサイクルビジネスの強化
- 新型エンジンへの参画
リスクの最小化- 品質保証体制の強化
- リスクマネジメントの強化
民間エンジン事業の大きな特徴は、新製時の供給にとどまらず、長期間にわたる運航を見据えたビジネスである点です。エンジンは20年以上にわたって使用され、その間、整備・修理・部品交換が継続的に発生することから、これをライフサイクルビジネスと呼んでいます。
IHIグループは、近年では、ライフサイクルビジネスを重要な事業機会と捉え、MROやスペアパーツ供給の能力強化に取り組んできました。最新設備を備えた整備拠点や、デジタル技術を活用した効率的なメンテナンス体制により、安定的かつ収益性の高いビジネスモデルを確立していきます。民間エンジン事業 収益モデルイメージ
また、今後想定される新型エンジンに参画していくことは、将来のアフターマーケット収益の拡大にも直結します。IHIグループは、国際共同開発への参画と技術的な役割拡大を通じて、長期にわたる収益機会の着実な積み上げを目指しています。実際に、複数の主要グローバルエンジンプログラムに参画し、部品供給やアフターマーケット分野において収益機会を拡大しています。民間エンジン事業では、2030年に売上収益約6,000億円の達成を目標に、高収益で参入障壁の高い魅力的な市場において持続的に成長していきます。
成長機会が豊富な一方で、民間エンジン事業は、需要変動や品質リスク、サプライチェーンの不確実性など、リスクが顕在化した場合の影響が大きい事業でもあります。影響を最小にするため、品質保証およびリスクマネジメント体制の高度化を進め、問題を早期に検知・対応できる組織とプロセスを構築してきました。さらに、防衛・宇宙分野など、技術的な親和性の高い事業と組み合わせることで、事業ポートフォリオ全体としての耐性を高めています。主要なエンジンプログラムにおけるIHIグループの
担当モジュール、部品および参画比率
IHIグループの民間エンジン事業が提供する価値は、部品供給にとどまるものではありません。航空会社に対しては、エンジンの高い信頼性や性能、耐久性、整備効率の向上などを通じて、安全運航の確保と運航コストの低減に貢献しています。エンジン性能の向上や軽量化は、燃費改善とCO₂排出量削減につながり、航空業界全体の環境適合性を支えています。
また、社会に対しては、安全で効率的な航空輸送インフラを支える基盤として、人やモノの移動、経済活動の活性化に寄与しています。さらに、防衛・宇宙分野で培った技術を民間事業に展開し、民間で磨かれた技術を安全保障分野へ還元するデュアルユースによる価値創造も、IHIグループならではの強みです。
IHIグループは今後も民間エンジン事業を通じて、安全・安心な航空輸送を守り続け、航空輸送の持続的な発展をつくり続けます。 -
防衛事業

安全保障環境の変化を背景に、防衛産業を取り巻く事業環境は大きく変化しています。IHIグループは、“推力”技術を強みとして、防衛力強化への貢献と事業成長の両立を目指しています。
市場環境
日本は現在、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面しています。地政学的なリスクの高まりにより各国は防衛力の強化を進めており、防衛投資は一時的な対応ではなく構造的な潮流となっています。こうした環境において、IHIグループの安全保障への貢献に対する期待も高まっています。
日本では、2022年末に「国家安全保障戦略」などのいわゆる「戦略三文書」が策定され、防衛力の抜本的な強化が明確に示されました。防衛予算は2023~2027年度の5年間で総額約43.5兆円とされ、2026年度(令和8年度)予算において防衛関係費および安全保障に資する関連経費は約10.6兆円となり、対GDP比約2%まで増額されました。新たに必要となる事業に係る契約額(物件費)の推移
また、規模拡大だけでなく、収益環境にも変化が生じています。「国家防衛戦略」では防衛産業は、「いわば防衛力そのものとしての防衛生産・技術基盤」と定義され、企業側の利益率の引き上げも進められています。これにより、従来に比べて、持続的な事業運営を行いやすい環境が整いつつあります。
防衛産業のプレイヤー
防衛産業は、防衛当局を中心に、主契約者(システムインテグレーター)、装備品メーカー、モジュール・部品メーカー、さらに整備・後方支援までを含む多層的な構造で成り立っています。装備品需要は景気変動の影響を受けにくく、国家の安全保障政策に基づき、中期で形成される点が特徴です。一方で、高い機密性や厳格な品質要求、長期にわたる供給責任が求められるため、長年の実績と信頼を有する限られた企業が産業を支えています。
事業戦略
このような防衛産業の特性のもとで、IHIグループの競争優位性の中核は、“推力”に関する技術力にあります。防衛装備においては、到達距離、到達時間、飛翔態様※、生存性といった要素が防衛能力そのものを左右し、これらを決定づけるのが航空エンジンやロケットモータに代表される推進システムです。
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軌道・高度・速度・飛距離などの飛び方の特徴や状況
IHIグループは、防衛用航空エンジンおよび固体ロケットモータの分野において、回転体、タービン、シャフト系など、極限環境下で高い信頼性が求められる中核部位を長年にわたり担当してきました。これらの部位では、設計上の性能達成に加え、量産段階においても品質のばらつきを抑え、運用期間を通じて同一品質を再現し続ける能力が不可欠です。
この要求を支えているのが、材料、加工、組立、試験を一体で成立させるMaterials & Processes技術の統合力です。IHIグループは、防衛と宇宙分野での事業を通じて、超耐熱材料や複合材料、素形材技術を高度化し、推進機器特有の「高推力・高温・高信頼」という要求を満たす技術体系を構築してきました。設計段階の性能を運用段階まで確実に実現できる体制そのものが競争優位性となっています。防衛事業 競争優位性の強化プロセス
さらに、防衛事業を支える人財と組織の力も重要な競争力です。厳格な品質要求や機密性を前提とした業務遂行能力、長期プロジェクトを完遂する組織力は短期間で構築できるものではありません。IHIグループでは、設計から製造、品質、供給までを一貫してマネジメントできる人財を育成・蓄積しており、長年の実績に基づく知見を組織として継承しています。
機会の最大化- 政府と連携した重点領域への集中
- 生産能力の強化
- 調達体制の強化
- 品質管理の高度化
リスクの最小化- デュアルユースの技術・生産基盤の強化
- サプライチェーンの強靭化
防衛力の強化や装備品の次世代化を背景に、IHIグループの強みである推力が生かせる分野では今後も引き続き需要拡大が見込まれます。IHIグループは、スタンド・オフ防衛、統合防空・ミサイル防衛、無人アセットといった日本政府の掲げる重点領域に経営資源を集中し、成長機会の確実な取り込みを進めていきます。
一方、防衛装備品は、運用環境の変化や安全保障上の要請に応じて、仕様変更や増産対応が求められるケースも多くあります。IHIグループは、生産能力の強化、重要材料・部品の調達体制の強化、製造プロセスおよび品質管理の高度化を通じて、こうした変化に柔軟に対応できる供給体制を構築しています。
また、需要拡大局面では、特定材料への依存や地政学リスクなどの不確実性が事業リスクとなり得ます。IHIグループは、民間と防衛に共通するデュアルユースの技術・生産基盤を強化するとともに、調達先の分散や供給網の強靭化を進めることで、安定供給と事業継続性の両立を図っています。
収益面では、こうした外部環境の変化を生かし、これまで以上の利益率を確保する事業運営を進めています。防衛事業の中長期的な成長を通じ、2030年には売上収益3,000億円規模の達成を目指します。防衛事業は、単なる装備品の提供ではなく、長期にわたって運用を支える信頼と技術を提供する事業です。IHIグループは今後も、防衛装備品や技術の提供を通じて、日本の安全保障基盤を支え、安心・安全な社会の実現に貢献していきます。
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宇宙事業

宇宙利用の拡大により、宇宙輸送から衛星データ活用まで幅広い事業機会が生まれています。IHIグループは、“推力”技術と衛星運用技術を生かし、宇宙ビジネスの成長を牽引していきます。
市場環境
宇宙市場は、従来の政府主導の開発に加え、近年は民間企業の参入によって成長が加速しています。世界の宇宙市場は、2025 年時点で約6,800億ドル(Space Foundation による推計)に達しており、通信・放送・測位などの衛星サービスや地上機器を中心に、ロケット打上げや人工衛星の製造・利活用も含めて市場拡大が続いています。日本においても、衛星利用などを含む「宇宙関連市場」の規模を、2030年代早期に2020年の約4兆円から約8兆円へと倍増させるという政府目標が示されています。
宇宙市場は「ロケット・衛星の開発・製造、打上げ」、「衛星運用・地上インフラ」、「衛星利用・サービス」、「宇宙探査・新興分野」に分類されます。近年は、小型衛星の普及やデータ解析技術の高度化により、災害対応、環境管理、インフラ監視など、社会課題の解決に資する衛星利用が進展しており、衛星利用・サービス分野が宇宙市場全体の約7割を占めています。また、民間による宇宙ステーション構想や、月周回軌道・月面での活動の本格化が期待される中で、地球から宇宙への輸送だけでなく、宇宙空間内での輸送の重要性も今後さらに高まっていくと考えられます。
一方、海外では、民間企業を中心に、低コストで高頻度な打上げ能力の確立や大規模衛星コンステレーションの構築が進み、宇宙ビジネスをめぐる国際競争は一段と激しくなっています。こうした環境下で、IHIグループは、長年培ってきた推進(推力)技術をはじめとする宇宙関連技術を基盤に、打上げ、インフラから衛星データの利活用までを見据えた価値提供を通じて、日本の宇宙産業・宇宙ビジネスの競争力向上に貢献していきます。IHIグループの取り組み状況
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- 固体燃料ロケットに代表される世界トップレベルの“推力”技術
- 衛星運用・データ利活用技術
IHIグループの宇宙事業における最大の強みは、世界トップレベルの“推力”に関する技術力と、打上げから衛星運用・データ利活用までを一気通貫で提供できるエンジニアリング力にあります。固体燃料ロケットに代表される推進技術、軽量構造設計、製造・品質管理、打上げ運用に至るまで、長年にわたり蓄積してきた技術と実績は短期間では獲得し得ない経営資源です。加えて、安全審査や制度対応を含む運用ノウハウと信頼の積み重ねが、お客さまから選ばれる理由となっています。
宇宙事業 競争優位性の強化プロセス
打上げシステムについて、株式会社IHIエアロスペースは、日本の基幹ロケットの一角をなす固体燃料ロケット「イプシロン」のロケットシステム開発と機体製造を担い、2013年の試験機打上げ以降、5回の打上げ成功に貢献してきました。現在、小型衛星打上げ需要の高まりに対応するため、能力を向上させた「イプシロンS」ロケットの開発に取り組んでいます。
また、液体燃料ロケット用エンジンについて、IHIグループでは、基幹ロケット「H3」のエンジン向けに、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と共同で液体酸素・液体水素用ターボポンプを開発し、量産製造を通じて高い信頼性と性能の提供に取り組んでいます。また、液体メタンを燃料としたロケットエンジンについては、約30年にわたり研究開発を実施しています。
衛星運用について、IHIグループは国内でも数少ない自社衛星の運用実績を有しており、2021年に打上げた超小型衛星「IHI-SAT」と2025年に打上げた超小型衛星「IHI-SAT-2」により、実運用を通じたデータ取得・解析の知見を蓄積してきました。衛星利用・サービス分野では、海洋監視サービスを提供しているほか、森林モニタリングやインフラ監視など、衛星データを活用したサービス開発を進めています。
さらに、衛星データを取得するインフラである、光学、SAR※、ハイパースペクトルといった複数のセンサを組み合わせた衛星コンステレーションの構築・運用を目指しています。複数種類の衛星を同時に運用し、得られたデータを統合的に解析・提供するためには高度な技術が求められ、同様の体制を構築できる事業者は限られています。IHIグループは、衛星コンステレーションの構築・運用に必要な技術を獲得し、その整備を主導します。さらに、陸・海・空・宇宙の各分野で培った事業基盤を生かして、多領域から情報を収集します。収集した情報をお客さまのニーズに応じて分析・提供することで、安全・安心な社会の実現に貢献していきます。-
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Synthetic Aperture Radar(合成開口レーダー)の略。人工衛星や航空機などに搭載したアンテナから電波を地表に向けて照射し、地表からの反射波を捉えることで、地表の形状や性質についての画像情報を取得する。
機会の最大化- 小型・超小型衛星需要の取り込み
- 次世代宇宙インフラの構築
- 衛星データ活用領域におけるデュアルユース市場の開拓
リスクの最小化- 供給制約への対応
- 品質保証体制の強化
- 長期事業リスクの管理
- 制度・規制対応の強化
ロケット打上げ分野では、拡大する小型・超小型衛星の打上げ市場で、固体燃料ロケットを中核とした信頼性の高い打上げサービスを提供していきます。政府・安全保障需要に応えるとともに、民間の地球観測衛星や通信コンステレーション構築を支える存在として、需要の着実な取り込みを図ります。
現在開発中の「イプシロンS」は、1.2トン級の衛星打上げ能力を有する小型ロケットとして、小型・超小型衛星を複数機搭載できる輸送能力を有し、大型ロケットと超小型ロケットの中間市場をターゲットとしています。低コストかつ柔軟な大量打上げへの対応により、次世代宇宙インフラ整備を下支えします。
衛星データサービス領域では、デュアルユース戦略のもと、防衛・安全保障需要と民生需要の双方に対応したサービス創出を進めています。サービス創出にあたっては、ICEYE社をはじめとする海外企業や国内スタートアップとの連携を通じ、最先端技術を柔軟に取り込みながら、組織としての競争力強化を進めています。ICEYE社と連携したSAR衛星コンステレーションでは、高頻度かつ高分解能な観測データ提供を通じ、防衛・安全保障分野や災害対応への貢献を目指しています。同時に、森林管理、環境監視、インフラ点検、水資源や農地管理など、社会課題解決型の民生向けサービスも展開しています。
一方、宇宙事業は高い信頼性要求と長期の開発・運用サイクルを伴うため、供給制約、重要部材の調達、品質確保、制度対応といったリスクが存在します。IHIグループは基盤強化への投資や体制整備を進め、リスクの適切な管理と事業の持続的成長を両立させていきます。IHIグループは、今後も安全・安心な宇宙輸送手段を提供し、宇宙空間からの観測情報を利用することにより、安全・安心・便利な社会への発展に寄与する機器・サービスをつくり続けます。
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原子力事業

世界的な電⼒需要の増加と脱炭素化の進展を背景に、原⼦⼒発電は重要なエネルギー源として再評価されています。IHIグループは、原⼦⼒発電所の安全を⽀える機器の設計・製作からプラントの運転支援・保守、また廃棄物処理までのライフサイクル全体にわたる事業基盤を生かし、国内外で拡⼤する事業機会を獲得していきます。
市場環境
- 電力需要の増加
- 脱炭素エネルギーの需要拡大
世界のエネルギー利用は、経済成長や都市化の進展に加え、データセンターや半導体産業の拡大を背景に、電力への依存度を高めています。国際エネルギー機関(International Energy Agency、IEA)は、こうした電力需要の拡大により、電力供給の安定性がこれまで以上に重要になると指摘しています。
原子力発電は、発電時に温室効果ガスを排出せず、長期間にわたり安定した出力を確保できる電源として、国際的に再評価されています。2023年のCOP28では、2050年までに世界の原子力発電容量を3倍に拡大する方向性が共有されました。2024年には世界の原子力発電量が過去最高水準に達し、現在、世界で約60基の原子炉が建設中です。IEAは、原子力分野への年間投資額が、2023年の約650億ドルから2030年には約1,200億ドルに拡大する可能性を示しています。※(2026年時点では、約800億ドルまで増加)-
※出典:IEA The Path to a New Era for Nuclear Energy
世界の原子力分野への年間投資額推移
原子力産業は、①原子力発電所や核燃料サイクル施設などの設計・製作・建設・据付、②運転・保守・設備更新、③廃止措置、④廃棄物処理・処分といった複数の領域で構成されています。これらの各領域では、高度な技術力に加え、厳格な規制対応と長期にわたる責任が求められます。そのため、原子力事業は、短期間で参入できる分野ではなく、長年の実績と信頼を前提として成立する産業構造となっています。
原子力産業のビジネスフロー
事業戦略
原子力事業 競争優位性の強化プロセス
IHIグループは、原子力発電所のライフサイクルの中でも、原子炉の安全を支える大型機器とその周辺機器を担ってきました。具体的には、原子炉圧力容器、格納容器、配管、モジュールなどを設計・製作・据付しています。
これらの機器は、原子力発電所の安全性や安定運転を維持するため高い品質が求められるとともに、建設時には、据付に必要なタイミングで建設現場に納入される必要があります。そのため、設計段階においては、製作しやすい構造や現地作業を最小化するための構造検討が行われ、製作段階においては、模型の製作や作業者の訓練などを行い、品質と工程の両立を実現しています。これらの活動は、原子力固有の品質プログラムに基づき行われる必要があり、実績ある企業として、原子力発電所の再稼働などにも貢献しています。保守においては、検査信頼性の向上を目指して、現在販売している原子力機器用の超音波探傷器「ARMUT®」のさらなる高性能化を進めています。その開発では、知財情報を含む幅広い情報を活用し、多角的な製品開発に取り組んでいます。
廃棄物処理・核燃料サイクル領域において、IHIグループは高レベル放射性廃液を安定した形で固化・管理するガラス固化技術を保有しています。この技術は世界的にみても、対応可能な企業が限られており、廃棄物の最終処分に向けて必要な基盤技術となっています。
また、高レベル放射性廃液を取り扱う施設において、遠隔操作は必要な運転・操作となります。高放射線環境下において、機器や設備を操作し、設備の運用・メンテナンスを支障なく行うには高い技術力とノウハウが必要です。こうした技術を、福島第一原子力発電所の廃炉に活用することで、早期の廃炉実現に貢献します。
さらに、IHIグループは小型モジュール炉(SMR※)分野にも参画しています。SMRは、発電設備として規模を抑えている点や受動的安全性の採用、部品点数の削減などにより安全性を高めた設計が特徴です。IHIグループは設計要件の検討段階から関与し、2025年にはルーマニア向けSMRの原子炉建屋用鋼製モジュールの実寸大模型を製作しました。このような活動を通じて、品質と納期の確実性を確保し、今後の量産展開や他案件への横展開につながる知見を蓄積しています。小型モジュール炉(SMR)
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原子炉1基ごとの出力を小さくすることで原子炉の冷却を容易にし、安全性を高めた原子炉
機会の最大化- 国内における再稼働向け安全対策工事、設備更新への対応
- 海外向け大型炉、SMR向け機器供給
リスクの最小化- 技術継承
IHIグループは、原子力事業を、建設だけで完結するものではなく、運転期間中の保守・更新や将来の廃止措置まで含めて捉えています。国内では、再稼働に向けた安全対策工事、設備更新といった需要に対応するとともに、運転期間中の改善工事を通じて、継続的な事業機会を確保しています。海外では、大型炉に加え、SMR向け機器の需要拡大を見据えています。
こうした需要に対応するため、横浜工場および相生工場の生産体制を強化するとともに、設計、製作、品質保証、現地対応を担う人財の増強を進めています。
また、原子力施設の新設技術の継承にも取り組んでいます。建設や運転を考慮した設計技術だけでなく、規制対応や品質保証の作り込みも重要となります。若手技術者を実機案件に積極的に参画・経験させることで、人財育成と技術継承を進めています。IHIグループの原子力事業が社会に提供する価値は、エネルギーの安定供給と脱炭素の両立を実現することです。原子力は、運転開始後も継続的な保守、設備更新、将来の廃止措置まで確実に遂行することで初めて成立するエネルギーです。
IHIグループは、原子力発電所の安全性を支える機器や技術を提供するとともに、運転期間中の改善工事や廃棄物処理など、ライフサイクル全体を通じて現実的な解決策を提供することで、原子力利用に不可欠な安全性と信頼性を具体的な形で支えています。
原子力を利用する社会が、その前提条件である安全性と信頼を維持し続けられるよう支えること。それが、IHIグループの原子力事業が果たしている役割です。これらの取り組みを前提に、原子力事業の売上収益を2030年代に1,000億円規模に拡大するとともに、2040年代にはさらなる拡大を目指しています。 -
アンモニアバリューチェーン事業

脱炭素社会の実現に向け、新たに燃料アンモニア市場の形成が進んでいます。IHIグループは、燃焼技術や受⼊‧貯蔵インフラに関する強みを生かし、製造から利活⽤までをつなぐアンモニアバリューチェーンを構築することで、新たな事業機会の創出と社会のエネルギー‧トランジションに取り組んでいます。
市場環境
- カーボンニュートラル燃料への転換ニーズの拡大
- エネルギー安全保障の観点での注目
アンモニアは、これまで肥料用途を中心に世界で年間約2億トンが消費されています。近年は脱炭素化の進展を背景に、電力、産業、船舶といったさまざまな分野で燃料としての利用が検討されています。日本では政府が燃料アンモニアを2030年までに年間300万トン規模へ導入・拡大する目標を示しています。欧米においても、脱炭素電源の一つとして、アンモニアの活用に関する議論が進展しており、燃料アンモニアは中長期的な成長が見込まれる市場形成の段階にあります。
日本国内での燃料アンモニアの導入規模
アンモニアを燃料として実用化するためには、製造、貯蔵・輸送、利活用といったバリューチェーンを一体で開発し、全体として機能するよう調整する必要があります。
肥料用途を中心とした既存市場では、需要が比較的安定していることから、各事業範囲に専門プレーヤーが存在し、分業による供給体制が確立されています。一方、燃料としてのアンモニアは、需要立ち上げの初期段階であり、需要動向に応じて製造・輸送の調整や安全に配慮した統合的なマネジメントが不可欠となります。
このような構造は、燃料アンモニア事業において参入障壁となる一方で、バリューチェーン全体を俯瞰した需給調整や最適化を通じて、新たな価値創出および事業機会を生み出す可能性を有しています。燃料アンモニアバリューチェーン事業の目指す姿
事業戦略
燃料アンモニアが市場形成期にある現在、将来の市場拡大に向けて、お客さまが低コストのアンモニアを安定的にかつ安全に利用できる環境を整備することが重要です。IHIグループは、燃焼・利活用技術、受入・貯蔵設備、安全設計に関する強みを基盤に、製造から利活用までのバリューチェーン一体とした事業開発を進めることで、市場の立ち上げとともに収益機会の獲得を目指しています。
- 優れたアンモニア燃焼技術
- 既存設備の活用によりお客さまの経済合理性を高める利活用技術
- LNG分野で培ったアンモニア受入・貯蔵設備の開発・供給能力
1.アンモニア燃焼技術の強み
アンモニアは水素と窒素から構成されており、不完全燃焼により、大気汚染の原因となる窒素酸化物(NOx)や、高い温室効果を持つ亜酸化窒素(N₂O)などが発生するという課題があります。IHIグループは、長年の火力発電で培った燃焼技術を応用し、電力分野のみならず、産業、船舶などの幅広い分野でアンモニアを確実に燃やし切り、これらの排出を抑制する技術を確立しています。
2.既存設備を活用する利活用技術の強み
お客さまの設備投資の負担を抑えつつ燃料転換を可能にする技術が強みです。例えば電力分野では、既存の石炭火力設備を活用しながら石炭とアンモニアの併用を可能としています。これにより、燃焼時にCO₂を排出しないクリーン燃料へのスムーズな移行を実現できます。また、有事の際には石炭への燃料切り替えも可能であり、柔軟な運用ができる点も強みです。
3.LNG分野で培ったアンモニア受入・貯蔵設備の開発・供給能力の強み
IHIグループは、日本国内のアンモニア貯蔵タンク市場において約70%のシェアを有しています。
燃料アンモニアのコストは、製造コストと流通コストで決まります。受入拠点や供給体制が未整備な場合、需要家ごとに個別輸送・受入が必要となり、流通コストが増加します。
これに対し、大型受入拠点を中心とした流通ハブを整備することで、大量一括輸入し流通コストを低減できます。
IHIグループは、LNG分野で培った技術・エンジニアリング力に加え、高い国内シェアに基づく実績を有しており、受入・貯蔵インフラの大規模化を主導し、流通コストの低減に貢献します。また、拠点構築に加え、拠点運営にも関与することで継続的な収益機会の獲得が可能です。
また、アンモニアは毒性を有することから、製造、貯蔵、輸送、利用の各段階での一貫した安全確保が不可欠です。IHIグループは、発電・産業プラント分野で培った安全設計、施工管理、運用・保守の知見を生かし、設備全体の安全性を確保する統合的なエンジニアリングを提供できる点にも強みがあります。これにより、技術、経済性、供給体制に加え、安全性を含めて事業を成立させることが可能となっています。
IHIグループの近年の開発進捗として、2024年4月に発電用ボイラーにおける燃料アンモニアの大規模燃料転換実証試験(熱量比20%)を実施し、良好な結果が得られました。また、2026年6月には、ボイラー向けアンモニア専焼バーナの実用化に向けた技術検証を完了するなど、燃料転換に向けた必要な技術の確立を進めています。ガスタービンについては、2022年6月に2MW級の中小型のガスタービンで100%アンモニア燃焼に成功し、さらに、2026年3月にはGE Vernovaの大型ガスタービンの燃焼器を使用した100%アンモニア燃焼試験に成功しました。アンモニアガスタービン
石炭火力におけるアンモニア燃料転換(20~60%)は、脱炭素への移行段階に位置付けられます。さらなるCO₂排出抑制を目指すには、アンモニア専焼への転換が選択肢の一つです。そのためには、大規模発電に適用可能な大型ガスタービンでの100%アンモニア燃焼技術の確立が鍵となります。現在、2030年までにアンモニア100%燃焼ガスタービンの実用化を目指すロードマップに沿い開発を着実に進めています。
IHIグループではこれら実証試験と並行して、商用化の観点から重要となる特許を2015年以降継続的に出願しており、特許権化されたアンモニア燃焼関連技術の中には公益社団法人発明協会による令和7年度全国発明表彰「発明賞」を受賞するなど、社外からも高い評価を得た技術が存在します。また、国際標準化の取り組みも進めており、燃料アンモニアの発電用大型ボイラーに関連する技術仕様書(ISO/TS 21343)の発行も行いました。これらの実証実績と知的財産の蓄積および国際標準化の取り組みにより、IHIグループは競合他社に対する優位性を確保するとともに、将来の商用化および収益化の実現可能性を高めています。機会の最大化- 世界唯一のアンモニア燃焼技術を起点とする事業開発
- 専門性を有するパートナーや官公庁との連携
- 政府支援制度の活用
IHIグループは、アンモニアバリューチェーン事業を、製造、貯蔵・輸送、利活用の各領域において、専門性を有するパートナーや官公庁との連携により構築しています。
インドでのグリーンアンモニアの製造・販売プロジェクトについては、インドの再生可能エネルギー企業大手であるACME社と連携し、グリーンアンモニアの製造および日本への輸出を視野に入れています。具体的には、インドにおいて同社と共同でアンモニア製造の開発検討を進めています。2030年ごろまでに年間40万トン規模のグリーンアンモニアの製造および日本への輸出を予定しており、2026年6月には、経済産業大臣および国土交通大臣から水素社会推進法※1 に基づく「価格差支援制度」※2 の認定を取得しました。日本におけるアンモニアバリューチェーンの構築・拡大を進めていく上で、本認定の取得は重要なマイルストーンとなります。-
※1
脱炭素成長型経済構造への円滑な移行のための低炭素水素等の供給及び利用の促進に関する法律
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※2
低炭素アンモニアを含む低炭素水素等のサプライチェーン構築を目的に、経済産業省資源エネルギー庁が、低炭素水素等の価格と既存燃料・原料の価格との差額を支援する制度
また、輸入したアンモニアを貯蔵するための、アンモニア供給拠点の整備も着実に進んでいます。北海道電力株式会社、三井物産株式会社および苫小牧埠頭株式会社と連携し、北海道苫小牧地域を中心としたアンモニア供給拠点に関する検討を進めており、2026年3月には、「拠点整備支援制度」※3 の認定を経済産業大臣および国土交通大臣より取得しました。
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※3
低炭素水素等の供給・利用を早期に促進することを目的に、経済産業省資源エネルギー庁が、低炭素水素等の輸送または貯蔵のために必要なインフラ整備に対して支援を行う制度
さらに、安全かつ安定したアンモニア供給体制の構築に向けて、世界有数のターミナル運営会社であるオランダのVopak社と、日本国内におけるアンモニアターミナル開発・運営に関する共同開発契約を締結しました。また、アンモニア海上輸送の最適化や、供給量の変動に柔軟に対応する相互補完体制の構築に向け、世界最大の肥料メーカーであるノルウェーのYara社と連携しています。このように、各領域の専業企業の知見を活用しながら、安全性と経済合理性の両立を図ります。
IHIグループは、製造から利活用までのバリューチェーン全体でCO₂排出を抑制しつつ、アンモニアを安全に利用できる環境を提供することで、お客さまの安定的かつ経済的な脱炭素化を支援します。
この実現に向けて、燃料アンモニアの製造・供給に加え、貯蔵設備や利活用機器、さらには運用・保守・部品サービスまでを一体で提供し、アンモニアバリューチェーン全体で事業を展開していきます。これにより、2050年までに約9,000億円の売上収益の創出を目指します。 -
橋梁・水門事業ほか

市場環境
- 都市部への人口・機能集中に伴う橋梁の新設・更新需要の増大
- 物流量の増加に伴う橋梁の新設・更新需要の増大
- 気候変動に伴う水災害リスクの高まりによる水門の新設・更新需要の増大
- 橋梁・水門の老朽化に伴う更新需要の増大
社会インフラを取り巻く環境は、都市部への人口・機能の集中、物流量の増加、気候変動に伴う水災害リスクの高まり、建設・維持管理分野の担い手不足などで厳しくなっています。したがって社会インフラを維持、機能させる難易度も高まっています。一方で、老朽化の進行によって更新需要は増大しています。今後は「更新すること」だけでなく、利用しながら更新すること、限られた人員で維持すること、想定外の事象が起きても機能し続けることが同時に求められます。
このため、社会インフラに求められる価値は、構造物単体の性能から、状態把握・運用判断・更新のしやすさまで含めた領域へと広がっています。設計・施工にとどまらず、更新と運用までのライフサイクル視点を持ったサービスを実装する能力が、事業者の競争力を左右する市場構造へと変化しています。事業戦略
●橋梁事業
橋梁分野では、都市部・重交通など制約条件が厳しい環境で、ユーザー利用を維持しながら同時に更新・延命化・耐震化を成立させる設計・施工・更新力が競争優位となります。IHIグループは橋梁事業の統合を通じて鋼橋※1・プレストレストコンクリート橋(PC橋)※2を含むライフサイクル全般を担う体制を整え、国内外の橋梁実績で培ったエンジニアリング力を更新・高度化局面で発揮していきます。
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※1
橋桁などの主要な構造部に「鋼(はがね)」を使用した橋梁
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※2
あらかじめ強い力で圧縮されたコンクリート(プレストレストコンクリート)を用いた橋梁
近年、市場側の要求は「老朽化更新」から「高度化した更新」へ移っています。例えば、IHIグループはトルコ共和国で、既存の横断インフラ群の渋滞に対し、計測交通量をベースにリアルタイムのダイナミックプライシングなどを用いて交通量の平準化・渋滞解消の可能性を調査する事業に採択されています。これは既存インフラの機能を拡充し、新たな社会課題を解決する装置として成立させることにつながります。
IHIグループでは過去20年以上にわたり更新・延命化・耐震化に関する技術の特許による保護を継続的に続けています。例えば更新に関する保有特許が他社から参照される頻度は2019年比で5倍になっている点が注目されます。このことは、IHIグループの技術が後続の技術開発において基盤的な役割を果たし、業界における設計・施工の前提として活用されていることを示しており、結果として他社に対する技術的主導権や参入障壁の形成につながっています。橋梁事業 競争優位性の強化プロセス
●水門事業
水門分野では、設計・製作・据付から点検整備までを一貫して担う体制の下で、災害時に確実に機能させるための運用・保全の知見や人財育成、遠隔化・自動化技術を積み重ねてきたことが競争優位性となります。気象災害の激甚化・頻発化への適応が求められる中、水門には単なる設備としての機能にとどまらず、非常時にも確実に作動する社会インフラとしての高い信頼性が求められています。高圧ゲートに代表される水密技術をはじめとするこのような高い信頼性は、設計から製作・施工、さらに長期にわたる運用・保全の実績と歴史を通じて培われてきた技術・知見によって支えられており、短期間で模倣できるものではありません。なお、これらの技術の一部を選択的に特許として保護する取り組みを行っており、競争優位性の強化につなげています。
水門事業 競争優位性の強化プロセス
ダム用水門設備
●シールドシステム事業
シールドシステム(掘進機)分野では、従来から長距離・急曲線・大断面・大深度などへの対応を進め、これまで不可能だった地下インフラの構築を可能にしてきました。また、トンネル掘削時の施工性の向上や地上への影響低減を図る技術開発を通じて、インフラ構築の効率化と施工時の周辺環境への配慮を両立し、競争優位性の確保に努めています。
IHIグループは、橋梁・水門・トンネルなどの都市・社会インフラを中核に、維持管理で得られる知見を起点として、更新計画の最適化、施工制約の大きい区間での更新、運用の省人化・無人化などへ踏み込み、都市・社会を平常時・非常時を問わず機能させ続けることを目指します。
その中で、以下の3点を将来の事業拡張の要点として位置付けています。- 維持管理で蓄積されるデータや知見を起点に、更新・運用まで含めて価値を広げること
- 大都市圏において限られた空間を前提に、人やモノの移動をより効率的にすること
- 次世代高規格道路や自動物流に対応し、社会全体の移動・物流を支える付加価値を高めること
維持管理は単なるアフターサービスではなく、更新・運用まで含めてニーズを把握し、ライフサイクルを通じて価値提供するための起点です。
IHIグループが提供する価値は、構造物・設備の納入にとどまらず、更新と運用まで含めて「止めない」「確実に機能する」インフラを実装することです。橋梁分野では人流・物流を支える基盤を更新・高度化し、都市活動の継続性に貢献します。水門分野では治水・利水を支える基盤を、運用高度化も含めて確実に維持し、シールドシステム分野では地下インフラの構築を行い、社会のレジリエンスに貢献します。
さらに、次世代の人流・物流の高度化に向けては、道路・拠点の結節点における無人荷役や到着情報連携など、運用を成立させる技術・知見が重要になります。IHIグループは、事業を通じて蓄積した経営資源を活用し、自動物流道路の社会実装に向けた実証などに取り組んでいます。道路と拠点オペレーションをつなぎ、社会システムとして物流を成立させる取り組みを引き続き推進します。
今後も、社会インフラの高難度エンジニアリングと、運用・制御・デジタルを組み合わせた高度化を両輪に、都市・社会インフラの更新・高度化市場で競争優位を確保し、安心・安全で快適な社会の実現に貢献しつつ、継続的にキャッシュを創出していきます。 -
カーボンソリューション・
原動機事業ほか
IHIグループのボイラメンテナンス事業は、火力発電所や産業用施設の既設ボイラの安定稼働を支える保全・改造・更新サービスを中心に展開しています。
ボイラ
IHIグループはボイラの設計・製造・建設において世界でも有数のメーカーとして、設備の構造や劣化特性に関する豊富な知見を有しています。また、ボイラの安全性や性能を維持し、改修できる点に加えて、脱炭素社会実現のためのアンモニアやバイオマス燃料などの燃焼・専焼技術や低品位炭などの有効活用など、エネルギーセキュリティの観点でも大きく貢献できることが強みです。
また、遠隔監視システム「MEDICUS NAVI®」を活用し、運転データの常時監視や異常兆候の早期検知、保守履歴の一元管理を行うことで、定期点検の最適化や突発停止の回避を実現しています。これにより、設備稼働率の向上と保全コストの抑制を同時に図っています。
収益面では、定期点検や部品交換といった継続的に発生する保全サービスに加え、老朽化対策や効率改善を目的とした改造工事など、ライフサイクル全体で安定したキャッシュ・フローを創出しています。IHIグループのプラントソリューション事業は、発電所や産業プラントの設計・建設(EPC)から運用・保守までを一貫して提供する事業です。新設プラントで培った設計・建設の知見や技術を起点に、長期にわたる運転・保守・改造サービスへと展開することで、プラントのライフサイクル全体を通じた価値提供を実現しています。
プラント
新設プラントにおいては、プラント設備の高効率化、施工の省力化、運転最適化など、お客さまのニーズの高度化に応える技術を育成し、コスト競争力の強化を通じて、継続的な受注につなげています。
また、近年は、既存プラントの脱炭素化を目的としたアンモニア燃料転換対応や、石油化学製品の需要変化に対応したプラント設備の増改築対応に加え、運転最適化や遠隔操作などのスマートプラント技術の導入や設計業務の効率化に向けてAIやIoT技術の活用を開始しています。これらの取り組みにより、プラントの安定稼働と長寿命化を支援しています。
新設案件の獲得を起点に、将来にわたる継続的なサービス需要を創出し、ライフサイクル全体で収益とキャッシュを積み上げる事業運営を通じて、プラントソリューション事業は、IHIグループ全体の成長投資を支える安定的なキャッシュ創出基盤を形成しています。原動機事業は、舶用・陸用エンジンなどの製品提供に加え、部品供給や整備、トラブル対応などのライフサイクル全体を通じたサービスを展開する事業です。
ディーゼルエンジン
エンジンの長期運用を前提に、運用段階における継続的なサポート体制を構築し、収益が積み上がる事業構造を有しています。
同事業のライフサイクルビジネスは、エンジンの販売・普及を前提として成立するため、製品ラインアップの単純な拡充ではなく、IHIグループの技術などの強みを生かし、お客さまのニーズに応えられる機種を重点的かつ戦略的に投入しています。これらの機種をお客さまに長期にわたり運用していただくことで、ライフサイクル全体でのコスト低減に貢献するとともに、IHIグループにとっても安定的な収益創出を実現しています。
また、原動機事業では、プラントやエンジン本体の提供にとどまらず、IHIグループが強みを持つエンジンのコア部品である燃焼噴射装置を他社製エンジン向けに供給するビジネスも展開しています。自社エンジンの普及に加え、コア部品の製品提供により、より広い市場でライフサイクルビジネスを創出しています。
これらの取り組みを支えているのが、将来の競争力を見据えた技術への継続的な投資です。信頼性や長寿命、メンテナンス性に資する技術をエンジンや主要部位に適用することで、原動機事業はIHIグループの安定的な収益基盤を形成しています。 -
パーキング事業ほか

パーキング事業は、機械式駐車場の設計・製造・据付からアフターサービス・運営支援までを一体で提供する事業です。
約50万機の納入実績と国内シェアNo.1の事業基盤を有しており、機械式(大型~小型)を中心としたフルラインアップ展開によって蓄積した豊富な既設ストックが事業の中核となっています。
今後は、大都市圏を中心にリソースを集中し、品質の高い保守・保全事業を拡大していきます。また、社会や利用環境の変化に伴う更新需要に対応し、機械式駐車場の長期間にわたる安全・安心な利用を支援します。こうした取り組みを通じて、既存設備を長く活用し、限られた都市空間を有効に使う持続可能なまちづくりに貢献します。地下式パーキング
回転機械事業は、圧縮機などの設備の設計・製造・据付からアフターサービスまでを一体で提供する事業です。
世界トップレベルの高速回転機械技術をベースとして高効率ターボ技術やLNG・水素などの極低温ガスを安全かつ効率的に扱うためのハンドリング技術を強みとして、幅広いお客さまに設備導入してきました。
納入設備に対する保守・改修などのサービスに加えて、今後はお客さま工場の圧縮空気の利用状況を診断し、設備の最適化や改善提案を行うエアオーディットを展開して、設備単体ではなく工場全体の効率化に取り組みます。
診断・改善提案から保守対応まで一体で提供することで、設備の運用段階における継続的なサービス提供と収益機会の創出につなげます。プロセスガス ターボコンプレッサー
熱・表面処理事業は、熱処理・表面処理装置の提供に加え、加工工程そのものを受託するビジネスをグローバルに展開しています。
幅広い業界を対象としており、従来は工具・自動車関連が中心でしたが、近年は持続的な成長が期待される航空・装飾・医療などに注力しています。
装置受注前のサンプリング対応や受託事業を通じて最適なオペレーションノウハウを蓄積しています。
最先端の設備・素材を探求されるお客さまのご要望にお応えすることがIHIグループの装置販売・受託事業の強みとなっています。熱・表面処理装置
物流・産業システム事業は、自動倉庫や各種搬送設備を組み合わせた物流システムの設計・製造・据付からアフターサービスまでを一体で提供する事業です。
お客さまのニーズに柔軟に応えるエンジニアリング力、迅速なサービス対応と品質に基づくお客さまとの信頼関係を強みとしています。
近年は、自動化・省人化の需要に対応した機器・ソリューションの提供に加え、設備の稼働状況と人の作業状況を統合的に管理するシステムの開発を進めています。また、設備から取得したデータを活用し、お客さまの運用改善やサービス内容の見直しを継続的に行い、サービスのコト売り拡大を図ります。自動倉庫
車両過給機事業は、自動車用ターボチャージャーの開発・製造・供給を行う事業です。
幅広い車種に対応する製品をグローバルに展開しており、多品種生産に対応した高度な生産体制とお客さまごとに異なる要求仕様を実現する設計力を有している点が強みです。
また、長年にわたる納入実績を背景に、自動車メーカーとの強固なパートナーシップを構築しています。
市場環境の変化に応じた生産体制を構築するとともに、お客さまとの関係強化を進めながらハイブリッド自動車(HEV)向けターボチャージャーに焦点を当てた製品競争力強化に取り組みます。
また、自動車会社および商用(バス・トラック)で長く使われるお客さまに対してのアフターマーケット向けの販売も積極的に進めています。車両用過給機
